過去ログ - 白菊ほたる「かげろう、プロデューサーさん」
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名無しNIPPER
[saga sage]
2015/10/01(木) 23:41:25.94 ID:cI/SoD+oo
ちょっといいですか、と声をかけると、彼女はビクッと身体を震わせて、この世の終わりみたいな顔を振り向かせた。
「怪しい者じゃないんです」
自分で言ってて、ついつい吹き出してしまった。
以下略
11
:
名無しNIPPER
[saga sage]
2015/10/01(木) 23:42:02.90 ID:cI/SoD+oo
――――
家に帰ってから、頬が引きつっていないか鏡で確認した。
スーツを脱ぐと身体中の筋肉が一気に緩んだ気がした。
布団へ倒れこんで、すぐに意識は形を崩した。
以下略
12
:
名無しNIPPER
[saga sage]
2015/10/01(木) 23:42:32.88 ID:cI/SoD+oo
――プロダクションに所属するとき、どうしても登録料が二万円必要なんだ。
俺がデタラメを言うと、ほたるちゃんは「両親に相談してみます」と眉をハの字にした。
二万円か。彼女くらいの子どもには途方もない大金だろう。
以下略
13
:
名無しNIPPER
[saga sage]
2015/10/01(木) 23:42:58.96 ID:cI/SoD+oo
名刺はない、会社の名前も聞かなかったと言うし、ほたるちゃんが持っているのはメモに殴り書きの電話番号だけ。
そして、登録料に二万円? 怪しい。
ほたるちゃんの両親がよほどのバカでなければ、本当にスカウトマンだったのか確かめようとするだろう。
いや、それさえしないはずだ。
以下略
14
:
名無しNIPPER
[saga sage]
2015/10/01(木) 23:43:25.97 ID:cI/SoD+oo
翌朝、目を覚ますと携帯電話に留守録が残っているのに気がついた。
再生してみると、ほたるちゃんの泣きそうな声が聞こえた。
『――反対されたんですけど、私……アイドルに、なりたいです。
あの、両親は……やめなさいって、言うんですけど……。
以下略
15
:
名無しNIPPER
[saga sage]
2015/10/01(木) 23:44:20.74 ID:cI/SoD+oo
「二万円かー」
結局、最適解は見つからないまま、朝食を食べ終わる。今日は何時間働くんだっけ。
隅に脱ぎ捨てたままのスーツが目について、拾い上げる。
以下略
16
:
名無しNIPPER
[saga sage]
2015/10/01(木) 23:44:52.05 ID:cI/SoD+oo
――――
一週間という一括りはいつからか空っぽのハリボテになっていた。
バイトに行って、寝て、何曜日と何曜日が休み。
待っているものはなく、ただ老いと死まで続く一本道を無感動に歩いているだけ。
以下略
17
:
名無しNIPPER
[saga sage]
2015/10/01(木) 23:45:22.95 ID:cI/SoD+oo
この一週間、バイトが終わってから携帯電話を見ると、いつも留守録が残っていた。
ほたるちゃんからだった。
『――お願いします……連絡、待ってますから……私、本当に、アイドルやってみたいんです……』
以下略
18
:
名無しNIPPER
[saga sage]
2015/10/01(木) 23:45:52.70 ID:cI/SoD+oo
『――お金、きっと用意します……私のお小遣いじゃ、全然足りないですけど……。
今、二千円だけあるので……全部用意できるまで、どうか待っていてもらえませんか……』
自分がほたるちゃんと同じ歳の頃、二千円はどれだけ大金だったろう。
必死に思い出してみて、それから二万円という金額の大きさに涙が滲んだ。
19
:
名無しNIPPER
[saga sage]
2015/10/01(木) 23:47:10.76 ID:cI/SoD+oo
ほたるちゃんと出会ってから一週間が経った、夜勤明けの朝。
今日も、留守録が残っている。やっぱり、ほたるちゃんからだった。
いいかげんにしてくれ、と思う。俺は、君の期待には応えられない。
全部嘘だったんだ、早いとこ諦めてくれないか。どうだ、ひどい男だろう。
以下略
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