過去ログ - 白菊ほたる「かげろう、プロデューサーさん」
1- 20
4:名無しNIPPER[saga sage]
2015/10/01(木) 23:38:00.17 ID:cI/SoD+oo
 シワだらけのスーツ、にょろにょろ伸びた髪と剃り残しのある髭。
 鏡へ映してみると最高に胡散臭かった。

 朝っぱらから、俺は街へ出た。
 駅前まで流されるように歩いて行くと、なんとなく、通勤する人々と自分とが似た者同士のような感じがした。
以下略



5:名無しNIPPER[saga sage]
2015/10/01(木) 23:38:27.14 ID:cI/SoD+oo
 人混みの中で、俺はかわいい女の子を探した。
 最初のうちは声をかけようとしても喉の辺りがキュッとなって、声が出なかった。
 登校途中の女子学生が何人も目の前を通り過ぎた。
 道行く人に訝しげな目を向けられ、おどおどしていたら却って怪しく見えるものなのだと開き直り、ようやく声が出るようになった。

以下略



6:名無しNIPPER[saga sage]
2015/10/01(木) 23:38:58.89 ID:cI/SoD+oo
 周りと自分とを比べるとあんまり違和感はないと思うのだが、多分、見るからに怪しいのだろう。
 目についた学生へ片っ端から声をかけてみたが、誰も相手にしてくれなかった。
 それから一時間もしないうちに、学生連中は姿を消してしまった。

 次は下校時間だな、と俺は近くのハンバーガー屋でコーヒーだけ注文して、窓際の席へ座った。
以下略



7:名無しNIPPER[saga sage]
2015/10/01(木) 23:39:31.14 ID:cI/SoD+oo
 はっと目を覚ますと、身体にものすごい熱が篭っていた。
 俺の頭を、バター色の西日がジリジリと焼いていた。

 どろどろの目で覗いてみると、駅の出入り口は人を飲んだり吐いたり大変そうだった。
 俺は紙のカップをゴミ箱へ捨てて、そそくさと店を出た。


8:名無しNIPPER[saga sage]
2015/10/01(木) 23:40:04.00 ID:cI/SoD+oo
 ぐーっと伸びをすると、いよいよスカウトマンを演じる気がなくなっているのに気づいてしまう。
 それはそれでいいのだが。

 俺はこれから、下校していく途中の女子学生に声をかける。
 笑われたり、怯えられたりして、結局、誰も俺のことを信じない。
以下略



9:名無しNIPPER[saga sage]
2015/10/01(木) 23:40:35.14 ID:cI/SoD+oo
 白菊ほたるは、十二分にかわいい女の子だった。
 色白で、少し憂いのある表情が男心をくすぐるような、儚げな女の子。
 歳は十いくつとかで、まだ中学にも上がっていないらしい。


10:名無しNIPPER[saga sage]
2015/10/01(木) 23:41:25.94 ID:cI/SoD+oo
 ちょっといいですか、と声をかけると、彼女はビクッと身体を震わせて、この世の終わりみたいな顔を振り向かせた。

「怪しい者じゃないんです」

 自分で言ってて、ついつい吹き出してしまった。
以下略



11:名無しNIPPER[saga sage]
2015/10/01(木) 23:42:02.90 ID:cI/SoD+oo
 ――――

 家に帰ってから、頬が引きつっていないか鏡で確認した。
 スーツを脱ぐと身体中の筋肉が一気に緩んだ気がした。
 布団へ倒れこんで、すぐに意識は形を崩した。
以下略



12:名無しNIPPER[saga sage]
2015/10/01(木) 23:42:32.88 ID:cI/SoD+oo
 ――プロダクションに所属するとき、どうしても登録料が二万円必要なんだ。

 俺がデタラメを言うと、ほたるちゃんは「両親に相談してみます」と眉をハの字にした。

 二万円か。彼女くらいの子どもには途方もない大金だろう。
以下略



13:名無しNIPPER[saga sage]
2015/10/01(木) 23:42:58.96 ID:cI/SoD+oo
 名刺はない、会社の名前も聞かなかったと言うし、ほたるちゃんが持っているのはメモに殴り書きの電話番号だけ。
 そして、登録料に二万円? 怪しい。
 ほたるちゃんの両親がよほどのバカでなければ、本当にスカウトマンだったのか確かめようとするだろう。
 いや、それさえしないはずだ。

以下略



39Res/21.01 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice