26: ◆MOU5m1dgOuYK[saga]
2015/11/07(土) 19:45:06.69 ID:mAvfgZ3t0
喫茶店に移動すると、部長がコーヒーは飲めるか、と聞いてきた。
飲めます、というと、部長はウエイトレスに、コーヒーとなにやら豪勢な名前のケーキを注文した。
「君は甘いものは好きかな? 僕は大好きなんだよ。このお腹を見れば分かるかもしれないがね、あはは」
そう言って部長はばつが悪そうに笑った。
「いえいえ、部長はやせていると思いますよ。俺も甘いものは好きです。家では甘いものばかり食べていましたし」
その時は本当に不思議なほど自然に話せた。
部長から滲み出るオーラが、とても優しいものだったからかもしれない。
「家に、って、引きこもり?」
「違いますよ、ちゃんと大学にも行ってました」
「おぉ、そうか、それはそうだよね、頭も良さそうな顔してるし」
「まぁ、講義を受けたらすぐに家に帰っていましたが」
「あぁ、友達いないの?」
随分デリケートな部分を抉る人だな、と思った。
しかし同時に、俺に似ているな、とも思った。
裏表も無く、思ったことをそのまま包み隠さず言う、そんな性格の俺に。
「いませんでした。中学までは努力しましたけど、高校以降はめっきりでしたね」
「あは、僕と同じだね、僕はあの○○高校に行ってたんだけどね、友達がいなくて勉強だけしてたら学年トップだったよ。笑っちゃうね」
まさか、と思った。
聞き間違いでなければ、この人は俺と酷似した学生生活を送っている。
「え、それ、俺と同じ高校です。俺も、学年トップでした。途中までは」
「お! そうなのか! って、途中まで?」
「はい、途中から勉強ばかりしていたら、何故かいじめのターゲットにされました。それで、勉強はやめてしまいましたね」
初めて過去を語った。
親にさえ話せなかった事を、ほんの先程会った人に。
先程この人が言った僕に似ている、というのはこういうことだったのか。
この頃に俺は、この人を信頼し始めていた。
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