1:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/03(日) 23:54:36.00 ID:hk0qelnk0
くぐもった振動音が聞こえた。 
 ぼんやりとした頭で、ベッドから窓を見る。僅かに開いたカーテンの隙間からは光が差し込んでいて、ひっそりとした寝室をやわらかく照らしていた。 
 いけない。少し寝過ぎてしまったらしい。そうはいっても、まだ冬休みだから慌てることもないのだけれど。 
  
 身体を起こしてベッドから出るその時に、そういえばと思い出す。 
 枕元の携帯電話に通知あり。差出人は由比ヶ浜さん。 
  
 『ゆきのん誕生日おめでとう!!ホントは0時になった瞬間送ろうと思ってたんだけど……えへへ。また今度お祝いするから楽しみにしててね!!』 
  
 顔が綻ぶ。 
 自分でも不器用だな、と思う手つきで返信文を打ち込んでは消し、打ち込んでは消しを繰り返した。そうしてできた自分なりに納得のいく文章を、少しの勇気を持って送信した。さてと……。 
 
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2:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/03(日) 23:56:37.46 ID:hk0qelnk0
 立ち上がってうん、と伸びをして窓辺まで歩く。カーテンを開け放って、ベランダに出て外を眺めた。年末に降った雪は未だに道路に白く残されたままだ。 
 遠くに見えるあれは兄弟? 子供たちが朝から元気に雪遊びをしているのが目に入って、思わず笑みがこぼれた。 
  
 「私も頑張らないと」 
  
3:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/03(日) 23:57:56.19 ID:hk0qelnk0
 机に向かっていると、またメールが届いた。小町さんからだった。 
  
 『雪乃さんお誕生日おめでとうございます☆ ごみ……間違えました! 兄からも何かするように言っておきますのでお楽しみに!』 
  
 相変らず兄妹仲が良さそうで安心する。どこかの家とは大違いねと、少しだけ羨ましく思った。じっと、メールの本文、そのさらに後方を無言で読み返す。 
4:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/03(日) 23:59:29.90 ID:hk0qelnk0
  
 たった今手拍子で送ってしまったメールを見返す。 
 そんなことをしても、いまさら何も出来ないというのに。 
  
 学校で会った時に謝ればいい。でも、何て言えば良いのだろう?素っ気ないメールを送ってしまってごめんなさい? ううん、そんなことをいきなり言われてもきっと小町さんは困ってしまう。だから……どうしようか? 
5:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/04(月) 00:01:00.64 ID:bBjfBo6F0
  
 ふと外を見れば、もう薄暗い。 
 冬至を過ぎたとはいえまだ1月。日が伸びたなと感じるには、もう少し時間がかかりそうだ。 
  
 「紅茶でも飲もうかしら」 
6:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/04(月) 00:02:09.70 ID:bBjfBo6F0
  
 「もしもし」 
  
 『ひゃっはろー雪乃ちゃん!』 
  
7:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/04(月) 00:03:38.78 ID:bBjfBo6F0
  
 『誕生日。おめでとうね、雪乃ちゃん』 
  
 素直に驚いた。 
 予想の斜め上だったから。姉さんがこれだけわかりやすい言葉を掛けてくれることが、久しくなかったから。電話の向こう側からは退屈そうな声が聞こえてくる。 
8:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/04(月) 00:05:36.10 ID:bBjfBo6F0
 うふふ、という含み笑いが聞こえてきた。今電話の向こうでどんな顔をしているかを想像すると、一刻も早く電話を切りたくなってしまう。 
  
 『いや、愛しの彼からプレゼントは貰ったのかなーって思って』 
  
 とくん、とまた心臓が跳ねた。 
9:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/04(月) 00:07:22.63 ID:bBjfBo6F0
 夕食は冷蔵庫に残ったもので簡単に済ませた。 
  
 本来であればもう少し机に向かうところだけれど、今日はどうにも手に付かなかった。 
 原因はわかっている。けれど、その原因を自ら除くことが出来ない。やる、やらないではなく、出来ない。なら私にはどうしようもない。そんな諦めの境地だった。 
  
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