14:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:09:04.62 ID:887tizks0
真ちゃんと晴菜ちゃんは付き合い始めてからも表面上はほとんど変わらないように見えた。私に対する態度も、三人で通学するのも、以前と同じ。晴菜ちゃんが真ちゃんをからかうのも相変わらずだ。
ただ、それでもやっぱり二人だけで合う時間は増えていて……。そんな時、二人はどんな事をしてるんだろうってつい想像してしまいそうになって、私は慌てて頭からその映像を追い出す。
15:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:14:43.34 ID:887tizks0
――私の心中なんてお構いなしに月日は流れ続ける。結局、真ちゃんと晴菜ちゃんは良好な関係を保ったまま高校を卒業した。
小学校からずっと一緒だった私たち。でも、大学への進学で初めて道が分かれた。
16:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:18:58.66 ID:887tizks0
真ちゃんが大好きな気持ちには変わりはない。ただ、晴菜ちゃんとの関係にモヤモヤしなくなっただけだ。そもそも、私の大好きな親友の二人が付き合い始めたのは嬉しいことのはずなのに……暗くなっていた私がおかしかったんだ。
そんな風に真ちゃんへの想いを整理した気になっても、私は他の男の人と付き合おうとは全然思えなかった。男の人への恐怖心は昔よりもだいぶ薄れてきたのに……なんでだろう……。ゼミで同じグループの人に告白されたりもしたけれど、私はそれに良い返事ができなくて……。
17:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:28:20.80 ID:887tizks0
大学生活三年目も半ばを過ぎて、枯れ落ちた紅葉が通学路の石畳を彩る頃、その電話のベルは鳴った。
時刻は二十三時前。携帯のディスプレイには真ちゃんの名前が表示されている。
18:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:30:08.26 ID:887tizks0
――バーのカウンター席に突っ伏している真ちゃんは電話で聞いていた通り完全な泥酔状態で、店員さんの手を借りてようやく店外に連れ出せるといった有様だった。
「1杯だけでここまで酔ってしまうとは思わなくて……」
19:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:34:12.89 ID:887tizks0
――居酒屋を出発したタクシーの車内には会話は無く、目的地を目指すタクシーの淡々とした走行音だけがその場を包み込んでいた。
時折、真ちゃんが不鮮明な唸り声を漏らす。その度に私は背中をさすってあげていた。
20:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:35:59.10 ID:887tizks0
結局その後は何事もなくアパートに到着した。タクシーの料金を払い終えてから隣を見る。真ちゃんは相変わらず目を瞑った苦しげな表情のままだ。
「真ちゃん、着いたよ。降りよう」
21:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:39:34.40 ID:887tizks0
目の前にある二階建てで横に長い作りをしている比較的新しめの建物が、真ちゃんが一人暮らしをしているアパートだ。私たちの家から大学までは最寄り駅から三駅ほどの距離。本来なら電車通学で問題ないはずだけど、真ちゃんは一人暮らしを経験してみたかったみたいで、お母さんから許可を得て大学から徒歩10分のこのアパートに住んでいた。
真ちゃんはフラフラと体を左右に揺らしながらも、なんとか一人で立つことはできるみたいだった。……かなり危なっかしいけれど。ただ、一人で歩くのは難しそうだったので腰に手を添えて誘導してあげる。
22:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:45:59.60 ID:887tizks0
――この鍵は真ちゃんからもらったものだ。
真ちゃんは掃除は定期的にするけど整理整頓が苦手みたいで、部屋が服や雑誌なんかで散らかりがちだった。それから食事を適当に済ませるところがあって、栄養バランスなんて全然考えてないみたい。スカスカの冷蔵庫の中身を見たら誰にでも想像はついてしまうだろう。なんとなく心配になった私は、1〜2週間に一度のペースで真ちゃんの家に顔を出して、片付けやお夕飯の準備をしてあげていた。お節介なだけかも……と心配していたけれど、真ちゃんは素直に喜んでくれたから内心ホッとしたのを覚えている。
23:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:51:36.06 ID:887tizks0
玄関に入ると真っ暗な部屋が私たちを出迎えてくれた。真ちゃんが靴を脱ぐのに手間取っている間に、手探りで電灯のスイッチを入れる。
玄関に明かりが灯る。私はまた真ちゃんが歩くのを補助しながらリビングを目指した。
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