37:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:48:25.95 ID:1EMEuCfU0
雑踏の中にあいつの姿を探して、誰かに肩をぶつけるたびに謝りながら、ふらふらと私は店から店へと探し続けた。
寒空の下、足が冷え、口から吐く息は白くなって人混みに消えて行く。
どこというあてもなく、さ迷い続ける私に、風の音だけが寄り添っていた。
38:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:49:21.08 ID:1EMEuCfU0
いない。
あいつはどこにいるのよ。
あいつはいま何をしてるのよ。
39:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:50:05.73 ID:1EMEuCfU0
駅近くのビルを回り込んで来た風が私の身体に吹き付ける。
寒い。とても寒い。凍えそうなほど。
ポケットにいれていた手を出して、こすりあわせてみる。
40:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:51:00.39 ID:1EMEuCfU0
ばさ、という音がして屋根にたまった雪が滑り落ちた。
その音を引きがねのようにして、ホームのすぐ側にある踏切の警報機が、かんかんと鳴りだした。
明滅する光が赤く視界の端に映る。
41:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:53:33.49 ID:1EMEuCfU0
通りすぎる人の一人一人をじっと見る。
いるかなと期待しながら。
きっといるに違いないと思いながら。
42:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:54:52.40 ID:1EMEuCfU0
歩きながらポケットから携帯電話を取り出す。
意地を捨てて、あいつの電話にかけてみた。
もうあいつは帰っている。たまたますれ違いになった、それだけ。
43:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:55:44.88 ID:1EMEuCfU0
とぼとぼと歩く道。
寒さがいっそう、つのる。
通りすぎた家の軒の下にかわいらしい雪だるまがあった。
44:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:56:54.64 ID:1EMEuCfU0
家の前の公園にさしかかる。
出口から出口を結ぶ線上は人の足跡で踏み固められている。
けれども、辺りにはまだ誰も跡を残していない綺麗な雪面が残っていた。
45:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:57:27.06 ID:1EMEuCfU0
「それって面白いか、伊織?」
声が、した。
聞き覚えのある声。
46:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:58:16.27 ID:1EMEuCfU0
寝ころがったまま、目を見合わせる。
声が出ない。
二人、そのまま。雪の中にいた。
47:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:59:51.47 ID:1EMEuCfU0
>>46
すいません、ミスがありました。
ここは読み飛ばしてください。
59Res/31.13 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。