過去ログ - 藤原肇「ハローグッドナイト」
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18:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:40:27.73 ID:cJnO2bq10

枕元に置いた携帯電話をわけもなく手にすると、数字はすっかり深夜と言われる時間を示していた。

そろそろ正しい順路で眠気がきてもいいはずなのに、どこで迷っているんだろう。

以下略



19:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:41:17.76 ID:cJnO2bq10

あぁ、星、そうだ、思い出した。

窓を開けると氷水のように冷えた空気が首元に触れて、鼻から肺の中に新しい酸素をため込む。
室内のものよりも研ぎ澄まされているみたいだけど、温度自体の差はなく感じた。
以下略



20:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:45:41.55 ID:cJnO2bq10

二回のコール音ののち、ひと呼吸置いて、「どうした」と優しい響を持った声が耳に届いた。

「お仕事中です?」

以下略



21:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:46:46.79 ID:cJnO2bq10

入寮して一週間も経っていないときのことで、ホームシックと呼ぶのが正しいのかわからないけど、今日みたいに眠れない日があって。

ほぼ一日がレッスンで、余計なことなんて考える隙間もないくらい疲れていたのに、いざベッドに寝転ぶと日中くらいに目が冴えていて、どうしようもなくさみしくなって、迷惑だとおもいつつもPさんに電話をした。

以下略



22:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:48:09.85 ID:cJnO2bq10

「星、見えるか?」

「今日は絶好の星見日和ですね」

以下略



23:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:48:48.77 ID:cJnO2bq10

そうかなぁ、って、とぼける人のせいで、どんどん口が動く。

この時間が、ただただ楽しい。

以下略



24:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:50:59.74 ID:cJnO2bq10

「また行きたいな、岡山に」

「今度はPさんも一緒に。両親もおじいちゃんもきっと喜びます」

以下略



25:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:53:23.45 ID:cJnO2bq10

「なにかあれば彼を頼りなさい」

実家の工房で、こちらを振り返ることなく作業を続けながら言ったおじいちゃんの言葉は、私だけじゃなく、Pさんも認められているんだってわかってすごく嬉しかったけど、頑固が地面に根を張っているような人をどうやって説得したんだろう。

以下略



26:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:55:24.42 ID:cJnO2bq10

「ふたりでまた星を見ましょう。それから釣りもして、もちろん陶芸も」

「よくばりだな」

以下略



27:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:56:08.40 ID:cJnO2bq10

話し始めてどれくらいたったんだろう。

どこかに行っていた眠気がいつの間にかゆっくりとこっちに近づいてきて、瞼をほんの少しだけ重くする。

以下略



28:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:57:02.78 ID:cJnO2bq10

ぐだぐだと葛藤していると、光の糸が目の前をななめに走っていった。
そのあと、電話のむこうから「ながれ星だ」と聞こえてきて、違う場所にいても同じ空を見ているんだって、こんな当たり前のことを単純に嬉しいって感じる。

「また流れた」
以下略



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