13:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:46:52.55 ID:6D4QUdRpo
 楓「取説はあらかじめ美優さんのIDOLに同期しておきました。ドールについて分からない事があればIDOLで調べれば問題ないかと思います」 
  
 IDOL(Individuals Databasing Of Lingo)とはポータブル式の量子基盤である。 
 旧世代における携帯電話と同じような形をしており、用途も似たようなものだが、本質は似て非なるものである。 
  
14:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:47:36.10 ID:6D4QUdRpo
 美優「蘭子ちゃんは、そのうちしゃべったり動いたりするんですか?というか……成長とか、するんですか」 
  
 楓「はい。まあ私たち次第でしょうけれど」 
  
 美優「というのは?」 
15:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:48:37.52 ID:6D4QUdRpo
 楓「確かに値段は張りますけど、安いのもあるんですよ。実際、会社の先輩にもローンを組んで飼ってる人いますし」 
  
 美優「飼うって、もうそれペットじゃないですか……」 
  
 楓「言葉のアヤです」 
16:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:49:30.41 ID:6D4QUdRpo
 美優はしばらく楓からドールについて説明を受けた。 
  
 曰く、食事や風呂、排泄などは気を使う必要がない。 
 曰く、外見は14歳の少女だが精神や意識が適齢に育つのは時間がかかる。 
 曰く、怪我や病気(故障)した場合、メーカーへ迅速に問い合わせる事。 
17:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:52:15.42 ID:6D4QUdRpo
  
 ◇ ◇ ◇ 
  
 美優と楓が同棲を始めてから1年と少し経つ。 
  
18:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:53:09.94 ID:6D4QUdRpo
 蘭子はしゃべりかけても正面を向いたまま反応らしい反応を見せない。 
  
 美優(中身はまだ赤ん坊みたいなものだって言ってたし、私の話は全然理解できてないんだろうな) 
  
 そうだと分かっていても、美優はなぜかそうしなければならないような気がして、自分の話をし続けた。 
19:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:54:22.40 ID:6D4QUdRpo
 顧客との販売取引、郵送連絡、仕入れの確認、納期の調整、卸問屋のチェック、その他雑用をこなしていると、いつの間にか夕方になっていた。 
  
 凝った体を伸ばしながら蘭子の様子をうかがう。 
 相変わらずテレビをじっと見ているが、番組はローカルニュースに切り替わっていた。 
 無意識に揺れる蘭子の瞳にテレビの淡い光がチラチラと反射している。 
20:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:55:01.87 ID:6D4QUdRpo
 ……日が暮れてしばらく、楓が帰宅して真っ先に目撃したのは、床に散らかった数々の衣服だった。 
  
 楓「ただいま……美優さん?」 
  
 奥の部屋から「おかえりなさい」という返事。 
21:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:56:18.76 ID:6D4QUdRpo
 美優「あとは髪型がもうちょっと……あ! あと靴も揃えないと……」 
  
 再び化粧台の前に座らせ、美優は1人でブツブツと呟きながら蘭子の銀髪を櫛で梳いている。 
  
 楓「美優さん」 
22:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:57:02.92 ID:6D4QUdRpo
 夜遅くまで営業している食料品店へ二人で歩いて行き、お弁当を買って帰ってくると、部屋の明かりを点けた楓が驚いたように呟いた。 
  
 楓「蘭子が動いてる」 
  
 美優「えっ」 
23:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:57:38.07 ID:6D4QUdRpo
 遅い夕飯である。 
  
 楓「……蘭子にお化粧までしたんですか?」 
  
 美優「はい……もしかして、駄目だった……?」 
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