2:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 09:28:17.48 ID:B8QMf6Gi0
空き缶を踏んで、見事に転んだ。それからはあっという間だった。襟首を引っ掴まれて、コンクリートの壁に叩きつけられたのだ。上条は喘ぎながらずるずると地面に落ちた。さっと三人のスキルアウトに取り囲まれる。どれもこれも、凶悪な面構えの男達だった。
3:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 09:28:59.44 ID:B8QMf6Gi0
「おいコイツ、たった三千円ぽっちしか持ってねーぞ」
いつの間にか財布を掠め取っていた不良の一人がイライラした声で言った。
「マジかよくっそ、見た目通りのシケた野郎だなァ」
4:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 09:29:36.13 ID:B8QMf6Gi0
上条は前髪を掴み上げられ、強引に立たされた。つよく目を瞑ってきたる衝撃に備えようとした。すかさず不良の一人が棒状の鈍器で腹を殴りつけてくる。想像の数十倍は痛かった。
「ぐあばッ!」
胃を分断されたような激痛がこみ上げてきて、上条は空気と一緒に体液のようなものを吐いた。頭の奥が急に熱くなって、逆に冷たい汗がじわりと前身に浮かんできた。前のめりに倒れかけたところに、次の膝蹴りが飛んで来る。鼻のすぐ横のあたりを打ちぬかれた上条は、歯がすべて砕けるのではないかと思った。
5:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 09:30:20.30 ID:B8QMf6Gi0
「おらよっ!」
今度は別の男が左手から強烈なパンチを打ってきた。上条は鮮やかな血液をぶちまけながら土に転がった。すうっと意思が遠のいていくのを感じた。
うしろからじっと彼を見つめ、同じ速度で追いかけてくるどす黒い空気の塊がある。それはいつも彼が気を抜いた途端に追いついてきて、彼を不幸のどん底に叩き落すのである。彼はいつもその影に怯えていた。
6:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 09:31:36.25 ID:B8QMf6Gi0
駅前ビルに西陽が差して、街はいくらか賑わいはじめた。授業日程から開放された学生たちが次々と流れ込んでくるのだ。ビルの側面を飾っている大画面には、近頃人気の女子アナウンサーが出演する番組が映しだされていた。
7:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 09:32:07.99 ID:B8QMf6Gi0
たとえばそれは、街でかなりの低いレベルにあるあの少年の学校も、上から五本の指で数えられる美琴や白井の通う常盤台中学も、例外なく同時に夏休みに突入するということである。
少しずつでもズラしてくれた方がイロイロ混み合わなくて楽なんだろうになーと、学生の立場である美琴は思うのだが、学園都市は学校単位というよりむしろ街全体で能力者の管理をしているため、大人からみれば此方の方が都合がいいのかもしれない。
ともあれ、一年で最大級と言ってもいいイベントを控えた学生たちには、どこか浮足立ったような様子が目立っていた。
8:名無しNIPPER[sage]
2016/06/12(日) 09:34:04.77 ID:41y9bjhWo
魔神に勝つ男が不良に負けんのかよwww
9:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 09:34:33.93 ID:B8QMf6Gi0
「そうねぇ、私も夏休みは研究の手伝いとかいろいろ入ってるし、お互い忙しい夏になりそうね」
「ええ。でもお姉さま、たまには黒子と一緒に」
「わかってるわよ。予定の会う日があればね」
10:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 09:37:03.51 ID:B8QMf6Gi0
「それにしてもホントあっついわねー。こんな日に当番だなんて、アンタも大変ね」
「ご心配には及びませんわ。わたくしUV対策だけはきっちりしていますから、この天候がかえって健康に良いくらいですし。お姉さまも特別部活動に所属していらっしゃる訳ではないのですから、運動不足にはお気をつけた方がよろしいかと」
「それならこっちも心配要らないわよ。運動不足なんて、私に限って」
11:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 09:37:52.94 ID:B8QMf6Gi0
「初春、どうかしまして?」
『もう、何処ほっつき歩いてるんですか白井さん』
いつもどおりの初春の、甘ったるい声だった。が、それには緊張めいた厳しさが混じっていた。
12:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 09:40:00.70 ID:B8QMf6Gi0
投下終わり
21Res/9.27 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。