過去ログ - 速水奏「早くキスして」
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18: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:20:37.31 ID:PfRiXHRX0
大人になって、大人組――今では自分がだけれど――に色々とお店を連れ回されて、大分お酒に強くなった
けれど、それでも、20歳になったその日の事……プロデューサーに、ここへと初めて連れてきて貰った時のことは、よく覚えてる。
あの時は、お酒を飲む事も初めてで、カクテル一杯で立てなくなってしまったのよね。そしてその後も、色々あって。
ふと横を見てみれば、どうやらプロデューサーも私を連れてきた時の事を思い出していたらしい。

以下略



19: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:22:04.75 ID:PfRiXHRX0
「ふぅん。そう言う事言うのね、プロデューサー。その後、『一杯で沈んだ』私の事を……」

「いやあれは――うん、いや、あれだ。この話はやめておくか」

「ふふ、それが賢明ね」
以下略



20: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:23:36.82 ID:PfRiXHRX0

なんて、私をよそにそんな会話をしているマスターとプロデューサー。
女性として扱ってくれるのは嬉しいけれど……もう、失礼しちゃうわね。
それにしても……。

以下略



21: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:24:26.67 ID:PfRiXHRX0
「……あの時は、ギムレットには早すぎたのかしら、なんてね」

プロデューサーが談笑している横で、そう独りごちて笑って。
私は、ギムレットを口した。
ギムレットの味は、あの時と同じままで何一つ変わっていない。それなのに、私はあれから随分と変わってしまった気がする。
以下略



22: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:26:03.05 ID:PfRiXHRX0
私のギムレットも、彼のシンデレラも飲み終わって、何となくの無言が続く。
それは決して、気まずい沈黙ではなくて、気安い関係特有の、気持ちい沈黙だったのだけれど。

「なぁ、奏」

以下略



23: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:27:27.83 ID:PfRiXHRX0
けれど、それを認めてしまうのは、なんだか悔しくて。無駄だとはわかっていても、誤魔化してみる。

「なんだか貴方と呑みたかったから、じゃダメかしら」

「まぁ、それでも嬉しいけど。そうじゃないだろ?」
以下略



24: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:28:22.79 ID:PfRiXHRX0
泣きたいくらい嬉しくて、けれどなんだか、悔しくて。
だから。だから、私は――……。

「……私ね、少しだけ嘘をついたわ」

以下略



25: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:29:07.47 ID:PfRiXHRX0
本当は、こんな弱音を吐くつもりはなかった。
久しぶりにプロデューサーとお酒を飲んで、思い出話に花を咲かせて。
それでおしまい。明日からまた頑張りましょう。そう言って、終わりにするはずだったのに。

「貴方にスカウトされて、高校生の時にアイドルとデビューして、とっても素敵な経験ができたわ」
以下略



26: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:29:34.91 ID:PfRiXHRX0
私自身、アイドルとして活動する事が楽しかった。仲間とライブをするのが楽しかった。彼と一緒に歩んでいくのが楽しかった。
それは偽りのない本当の気持ちだけれど、それはいつも、私の為ではなくて、ファンという他の『誰か』の為だったこともまた事実で。

「それは……アイドルだから」

以下略



27: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:31:19.50 ID:PfRiXHRX0
「奏は、奏だよ。誰が何と言おうと……昔からずっと俺のパートナーの、速水奏だ」

彼はこうやって、こういう時に欲しい言葉をくれる人だから。
それに甘えてはいけないって、頭ではわかってる。
彼とは背中を預け合う関係で、寄りかかっちゃいけない関係なのだから。
以下略



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