24: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:43:34.42 ID:N7BH6Wdqo
その日の夜、ジェリーちゃんに餌をあげるために、私は水槽の傍に腰掛けた。
梨子 「梨子ちゃん、学校は楽しかった?」
梨子 「そうね」
25: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:44:25.38 ID:N7BH6Wdqo
梨子 「でもあの二人は、ほんとに私のことが好きなのかな?」
梨子 「どういうこと?」
梨子 「千歌ちゃんと曜ちゃんは、東京から来た私のことを珍しがってるだけかもしれないよ」
26: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:46:23.76 ID:N7BH6Wdqo
梨子 「ピアノという飾りをなくしたら、私なんか、何者でもないのよ。
誰にも見えない、ノーバディーになっちゃうのよ」
梨子 「そんなことないよ。
梨子ちゃんの姿は、ちゃんと目に見えるよ。
27: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:47:07.29 ID:N7BH6Wdqo
梨子 「……うるせえ、クラゲ!」
梨子 「言いやがったな、このヒトデナシ!」
梨子 「ヒトデじゃねえ、クラゲだ!」
28: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:47:45.75 ID:N7BH6Wdqo
次の日から、千歌ちゃんは私に作曲を押し付けようとはしなくなった。
その代わりに、ますます私にちょっかいを出すように……出してくれるようになった。
そのクラゲのような手練手管に耐えかねて、私はついに音を上げた。
梨子 「ねえ、千歌ちゃん」
29: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:48:58.69 ID:N7BH6Wdqo
梨子 「でも私は、あなたに好きになってもらえるようなこと、何にもしてないわ。
何にもしてないだけじゃない……何にもできないのよ。
だから私に期待するのは、もうやめたほうがいいわ」
千歌 「そりゃまあ、私は梨子ちゃんにすごく期待してるけど……
30: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:49:43.62 ID:N7BH6Wdqo
よく分からない押し問答をしているうちに休み時間が終わった。
私の机を離れるときに、千歌ちゃんがはにかみながら付け加えた。
千歌 「そうそう、実は今、私、歌詞を書いてるの」
31: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:50:45.38 ID:N7BH6Wdqo
その日の夕方、アクアリウムの水換えをしながら、バケツの中のジェリーちゃんに話しかけてみた。
梨子 「ねえ、ジェリーちゃん」
梨子 「どうしたの、梨子ちゃん」
32: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:52:31.40 ID:N7BH6Wdqo
梨子 「……うるせえ、クラゲ!」
梨子 「言いやがったな、このヒトデナシ!」
梨子 「ヒトデじゃねえ、クラゲだ!」
33: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:53:51.07 ID:N7BH6Wdqo
梨子 「どうやって見せてもらえっていうのよ!」
梨子 「人間のままでは恥ずかしいなら、クラゲになって行けばいいじゃない」
なるほど、たしか家には、大きな半透明のビニール傘があったな。
34: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:54:37.14 ID:N7BH6Wdqo
最近気づいたのだが、千歌ちゃんの家は私の家のすぐ近くらしい。
そこで私は、次の日の下校中、千歌ちゃんと曜ちゃんを尾行することにした。
千歌ちゃんが曜ちゃんと別れたあとで、私はかねて用意していた「クラゲ傘」をさして、自分の姿を隠した。
不審者以外の何者でもない姿で、私は千歌ちゃんの肩を背後からぽんと叩いて、声色を変えて話しかけた。
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