42: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:34:04.89 ID:JY7Hx0GQ0
ちひろ「……それは、確かにみんなの武器です。でも、武器はそれだけじゃない」
のあ「そう。わかっているつもりよ。きっと私にも何かあるはず……でも、私は空っぽだった」
のあ「誰かの真似はできる。でも、創造することができなかった。誰もがしていることだけをなぞって、高望みなんてしないで、ただ石を投げられないようにする……それが私の全て」
43: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:36:13.67 ID:JY7Hx0GQ0
のあ「貴方のアイドル達の当たり前を、私には真似できない。これから先どれだけ時間をかけたとしてもきっと手は届かない」
のあ「……私の存在は、上を目指す彼女達にとって足枷になる。そのくらいなら私は、アイドルを辞めるわ」
44: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:37:58.32 ID:JY7Hx0GQ0
P「環境が変われば、力を発揮できる人間は数え切れないほどいる。それを見つけて磨くのが俺の仕事だ」
P「……でも、高峯は、違う世界を目前にしても、変われないと、そう言うんだな」
45: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:39:07.05 ID:JY7Hx0GQ0
のあ「……それでもまだ、私が変われないと言ったら?」
P「その時の選択は、尊重する。だけど、今の高峯の話は、俺のわがままでなかったことにしてくれないか」
のあ「別に、構わないわ……でも、人はそう簡単には変わらない」
46: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:41:17.37 ID:JY7Hx0GQ0
今朝の一悶着などなかったように、ボイスレッスンに歌を意識した練習が加わった。
私の辞意はプロデューサーとちひろ以外には伝わっていないらしく、誰もが、普段通りに私に接してくる。
47: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:43:07.89 ID:JY7Hx0GQ0
――今日も、空に星はない。
この空は私を裏切らなかった。そして、彼女も。
48: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:44:07.77 ID:JY7Hx0GQ0
彼女とて、事務員とはいえプロダクションの社員だ。潜在的に何かを持っている人材が欲しいのは当然だろう。だけど、私はそうではない。期待に添えないのだ。
私は彼女に背を向けたまま、言葉を紡ぐ。
のあ「……私は、この空が好き。何もない空が。それだけで、いいの。何も望まない……望めないわ」
49: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:45:52.58 ID:JY7Hx0GQ0
ちひろ「望遠鏡です。空を見上げるための。好きに使ってくださいとは言いましたが、できれば、星を見つけてくれたら嬉しいです」
黒いビニルのケースに入ったそれを私に差し出した彼女は、「もうしばらく鍵は開けておきますから」と言い残して、屋上から姿を消した。
50: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:46:56.24 ID:JY7Hx0GQ0
のあ「……っ、」
思わず、目を背けてしまった。
51: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:48:14.15 ID:JY7Hx0GQ0
彼女の言葉が、脳裏によみがえる――星を見つけてくれたら嬉しいです。
今の季節には、何の星が出ているのだろう。
夏の大三角は聞いたことがある。ベガと、デネブと、あと一つは何だっただろうか。
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