2:名無しNIPPER[sage]
2016/08/10(水) 20:12:23.31 ID:/7spWSuao
学生達の夏休みが始まり、少し経つ。あと幾日もすれば八月だ。夏の熱い日差しがコンクリートを
焼きつけ、少し先では陽炎が揺らめいている。天気は快晴。空には雲ひとつなく、今日も真夏日に
なるだろう。かつての俺ならばこんな日でもスーツであったが、今はワイシャツでネクタイもせずに
歩いている。
3:名無しNIPPER[sage]
2016/08/10(水) 20:12:49.66 ID:/7spWSuao
かつてこの世界はアイドルという存在に熱狂していた。一つのブームという枠を越え、時代をも
揺り動かすような巨大な流れが存在していた。しかしそれはある日、とある事件をきっかけに唐突に
終わってしまった。白熱したアイドル競争の果てに生まれたその事件は世界をアイドルという夢から
覚ませてしまったのだ。どこにでもいたアイドル達の姿は今となってはほとんど見られない。各地に
あったアイドル事務所は次々と閉鎖し、業界でトップクラスの我がプロダクションでさえ、アイドル
4:名無しNIPPER[sage]
2016/08/10(水) 20:13:15.49 ID:/7spWSuao
「Pは……魔法使い……。シンデレラに……ドレスをあげた人……。もしもシンデレラに……
私がなってたら……魔法は解けて……ガラスの靴を落として……探しに来た王子様と……一緒になる……。
そうしたら……Pと一緒に……こうして歩けないから……。だから……これでいい……。
それに……みんながシンデレラだったら……階段は……ガラスの靴だらけ……。帰りも……
カボチャの馬車で……渋滞しちゃう……。きっと……最初からシンデレラは……ほんの少しだけ……。
5:名無しNIPPER[sage]
2016/08/10(水) 20:13:41.75 ID:/7spWSuao
駅は相変わらず混雑している。俺たちは改札口から少し離れた場所に立って、最後の挨拶をする。
しかし俺は言葉を切り出せずにいた。言葉が見つからないのか、それとも言葉を交わして彼女と別れるのが
嫌なのか。時間だけが少しずつタイムリミットへと迫っていった。
「私……東京の高校に……進学する……」
6:名無しNIPPER[sage]
2016/08/10(水) 20:14:07.68 ID:/7spWSuao
彼女を帰すのは正しいことなのか?
彼女が東京に進学するのに反対するのは間違いなのではないか?
彼女は地元に戻ったら、またあの寂しそうにしている彼女に戻ってしまうのではないか?
そんな思いが去来する。彼女に寂しい思いをさせたくはない。だが俺に何が出来る。
これから失職するかもしれない俺に何が出来るというんだ。
7:名無しNIPPER[sage]
2016/08/10(水) 20:14:33.51 ID:/7spWSuao
「雪美。元気でな。メールとかいつでもしていいからな」
「うん……毎日百回くらい……する……」
「いや、そこまでしなくていいから」
「冗談……ふふっ」
8: ◆pAskRqSnOc[sage]
2016/08/10(水) 20:14:59.91 ID:/7spWSuao
以上
9:名無しNIPPER[sage]
2016/08/10(水) 20:27:57.32 ID:uz04xjR9O
その後再開するお話をR板でやるんですよね?
10:名無しNIPPER[sage]
2016/08/10(水) 21:03:53.46 ID:k2lTamfTo
おつ
11:名無しNIPPER[sage]
2016/08/11(木) 10:31:51.65 ID:0Sa70KVj0
乙
アイドル時代を終わらせた事件か…
涼ちんの秋月くんがカイラスギリーだったとか、世界レベルが佐渡島レベルだったとかか
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