13:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:00:49.53 ID:Ljuzcmhc0
あずにゃん。
それまでずっと無言だった唯先輩が、振り返ってわたしの名前を呼んだ。
わたし、ずっと考えてて。あずにゃんから手紙もらってからずっと考えたんだ。
14:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:01:17.37 ID:Ljuzcmhc0
「ごめんね、遅くまで付き合わせて」
「いえ…呼び出したのはわたしですから…」
「そっか。そうだったね。それに明日は休みだし。ちょっとくらい遅くなってもいっか」
15:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:01:51.28 ID:Ljuzcmhc0
ここまで悩んで考えてくれるだけでうれしかった。
だからわたしがちゃんと言葉にしてきもちを伝えなきゃ…!
そう思って顔をあげた瞬間、わたしの目に映ったのは唯先輩の涙だった。
16:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:02:21.27 ID:Ljuzcmhc0
☆☆☆
めっっちゃ、おもしろかったなぁー!!
…と鼻息を鳴らしながら律先輩が両手をあげた。
17:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:03:14.29 ID:Ljuzcmhc0
怪獣が光線を吐いて街を破壊するシーンを見て、正直胸がスッとした。
もし今のわたしに光線を吐き出す能力があれば、きっとその力で世界を滅ぼしてしまうだろう。
フられたくらいでそんなふうに考える自分がひどく子どもじみてるなんてわかっているけれど、今はもう、目に映るもの全部が憎たらしかった。
月曜日がやってくるのがいやだ。どんな顔して唯先輩に会えばいいのかわからない。台風で学校が壊れてしまえば登校しなくて済むけれど、今夜中には近畿地方を抜けるらしい。ねぇゴジラ、どうかその光線で学校を壊してくれない? …そんなの無理に決まってる。だからわたしは逃げ出すことに決めた。背中にリュックを背負って、今日、この街を出る。そして誰もわたしのことを知らないところへいく。それから…。
18:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:03:47.07 ID:Ljuzcmhc0
「あずさー?? どしたー???」
わたしの目の前で律先輩が右手をぶんぶんと振っている。
はっと気がついて笑ってごまかそうとしたけれど顔が固まって表情がつくれない。なんでもないです。そう無愛想につぶやいてわたしは早足で歩き出した。律先輩もあわてて後ろからついてくる。
19:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:04:22.65 ID:Ljuzcmhc0
外に出るまでもなく、一階に降りてくるとものすごい雨の音が、館内に響いていた。
リュックの中から折りたたみ傘を取り出してじっと見る。アーケードの下にいる間はいいけれど、バス停まではしばらく歩かないといけない。はげしい雨風に吹かれれば、こんなちっぽけな折りたたみ傘くらい、簡単にふっとばされてしまいそうだ。けれどいまさら憂鬱な気持ちに浸ったところで何がどうなるわけでもない。傘が折れて多少濡れるくらい仕方ない…多少なら。
20:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:05:08.07 ID:Ljuzcmhc0
「思ってたよりずいぶんはげしいな」
律先輩はあくびを噛み殺しながらそう言った。
「なぁ梓。これから予定ある?」
21:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:05:52.45 ID:Ljuzcmhc0
どれくらいここにいるつもりですか?
雨がマシになるまで。
は? そんなこと言ったらいつになるかわかりませんよ。
だってこんなに雨降ってたらぜったい濡れるじゃん。
22:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:06:29.80 ID:Ljuzcmhc0
閑散としたアーケード街の入り口あたりのビルに入り、そこの一階で受付を済ますと、わたしたちはエレベーターに乗って3階まであがった。
こんな台風の日に働いているアルバイトの人たちは、一体どうやって帰るつもりなんだろう。けれどわたしたちだってひとのことは言えない。
歌い終わった律先輩はコーラの入ったコップを手に取り、一気に飲み干した。
23:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 23:07:09.31 ID:Ljuzcmhc0
歌えば喉が渇いて、喉が渇けば飲み物が欲しくなり、なにかを飲めばトイレに行きたくなり…
部屋の外からも止むことのない雨と風の音が聞こえてくる。勢いは弱まるどころかますます強まるようだった。
「なくなってたから補充しといた」
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