過去ログ - 困り顔のモリィ
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1: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/21(日) 23:33:51.93 ID:Aj1Xs5gP0
 意味のない文章を書くのは、想像以上に難しい。

 何故なら、文章はそもそも意味を持つ文字列であり、意味の伝わらない文章とは単語の羅列された文の羅列でしかない。あるいは文字の羅列された単語の羅列に他ならないから。

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2: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/21(日) 23:35:58.07 ID:Aj1Xs5gP0
 文章とは文字の有意味の配列であり、書き手がいる以上、配列された文字は何かしらの意味を持つ。文字はコミニュケーションツールであるから、文字の組み合わせによって存在する文章にはどうしたって意味が生まれる。この本質は厄介で、文字が文字たる所以は意思伝達の道具であるが故に、コミニュケーションツールとしての意味を剥奪してしまえば、ただの記号に成り下がってしまう点にある。

 記号の羅列は最早文章とは呼ばない。何事にもルールがあり、ルールの中に自由がある。文字を用いて文章を書く行為は、特定でも不特定でも誰かに意思伝達という、言葉の意味を伝える行為そのものなのだ。少なくともルールを守って文字を配列させなければ、それは文章と呼ばれないだろう。

 あるいは、文字を用いなければ容易に、純粋に意味のない文章を書くことができるのかもしれない。しかし、わたしは文字を用いない文章の書き方を知らない。
以下略



3: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/21(日) 23:37:33.83 ID:Aj1Xs5gP0
 視線を上げる。薄緑の壁に浮かぶ青いデジタル文字は、無機質に午前十時を表示している。横に浮かぶ天気表示は雨。その下を走るニュースのタイトルに興味の沸くものはなかった。昼食にはまだ早い。仕方ない、雨でも散歩に行くか。と、立ち上がろうとしたとき、凄まじい雷光が窓の外からわたしの影をテーブルに投影した。

 完璧な防音処理はわたしの命を奪いかねないな。なんて意味のない言葉を頭に転がした。都市部では落雷による死亡者なんて、もう何十年も出ていない。人類はあらゆる災害に対策してきたのだから当然だ。それなのに、わたしの外出する意欲は削がれる。どうやら本能的に恐怖するものがあるらしい。

 背もたれに身体を預けると、エアマットは優しく包み込んでくれる。使用者に負担をかけないよう設計されたエアマットチェアだけど、どちらかというと眠気を誘う効果のほうが大きいと思う。
以下略



4: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/21(日) 23:39:04.63 ID:Aj1Xs5gP0
 ただし、意欲があればと注釈をつける必要はある。残念ながら現在、わたしの意欲は墜落寸前。こればかりは人間の問題である。どれだけ理想的な環境を用意しても、人間側に意欲がなければ宝の持ち腐れに陥る。

 しかし、考えてもやる気はでない。暇なものは暇なので。

 わたしは身体を起こして、
以下略



5: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/21(日) 23:42:50.78 ID:Aj1Xs5gP0
 もちろん、人間と人工知能は生殖活動はできない。ただ、もし子孫を残せたとしても、それは生物なのか判断に困るだろうからこのままでいいけれど。

 余計な思考を端に寄せて、定義を考える。

「文章として読めるけど意味のない文章。あるいは意味を無意味にする文章。ただし無意味や矛盾を伝える文章は、意味を有すると捉える」
以下略



6: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/21(日) 23:44:38.71 ID:Aj1Xs5gP0
「なら、わたしがわたしに向けて意味のない文章を書くことは可能……」

「それもまた難しいと思います。ある瞬間においては可能ですが、恒常的に『意味のない文章』であることは、時間の経過を無視しなくてはなりません」

 申し訳なさそうに無理を言うモリィ。不満のひとつでも表明しようかと思ったけれど、わたしが好きで老いているわけではないように、モリィもまた好きで不変なわけではないのだ。さすがに八つ当たりはかわいそうだろう。
以下略



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