過去ログ - モバP「ロマンチスト・エゴイスト」
1- 20
1:名無しNIPPER[sage]
2016/09/09(金) 18:07:49.73 ID:hnFuSz2go
長引いた会議が終わり、デスクに積まれた書類を確認していると、千川ちひろがパタパタ足音を立てこちらへ向かってきた。

「プロデューサーさん、お疲れ様です。会議、かなり長引いたみたいですね」

「流石に疲れました。各々やりたいことのぶつけあいで結局結論は出ませんでしたけど」

ちひろからコーヒーを受け取り、一口啜る。苦味が頭をスッキリさせてくれる。

「そういえば、志希のミニライブはどうでした?」

それがですね、と憂慮の色を浮かべるちひろからUSBメモリが手渡される。
担当アイドルのライブには出来る限り同行しているが、今日のように重要な会議が入った時などはちひろに同行してもらい、ライブを撮影してもらうよう頼んである。
今日は担当の一ノ瀬志希がミニライブを行ったはずだが、ちひろの表情から察するに、何かしら良くないことが起きたらしい。
USBメモリをパソコンに繋ぎ動画を再生する。
2曲目の途中、志希の足がもつれ、転倒しそうになる場面があったが、なんとかリカバリーし、その後は問題なく踊り続けていた。

SSWiki : ss.vip2ch.com



2:名無しNIPPER[sage]
2016/09/09(金) 18:08:25.15 ID:hnFuSz2go
「ここって確か」

「前回のライブで転んだ所ですね」

志希は前回のライブでも、その曲の同じ場面で転倒していた。
以下略



3:名無しNIPPER[sage]
2016/09/09(金) 18:09:20.64 ID:hnFuSz2go
今朝の予報通りの雨が降る中、帰路につく。
折りたたみ傘が少し小さいからか、アパートに着く頃には背広が少し濡れてしまっていた。
もう少し大きめの折りたたみ傘でも買おうかと考えながらアパートの階段を上り自分の部屋を目指す。
俺の部屋の扉の前には、濡鼠になった志希が座っていた。

以下略



4:名無しNIPPER[sage]
2016/09/09(金) 18:09:57.50 ID:hnFuSz2go
「入るぞ」

一応脱衣所の扉をノックしてから聞くと、はーいという返事が風呂場から聞こえるのを確認してから脱衣所に入った。
空いた洗濯カゴにバスタオルと着替えを置き、洗濯機に洗剤を入れ、回し始める。

以下略



5:名無しNIPPER[sage]
2016/09/09(金) 18:10:29.95 ID:hnFuSz2go
しばらくすると、志希が風呂から上がってくる。
座卓以外に座布団も無く、椅子も俺が座っているパソコンデスク用の物しか無いので、志希は自然とベッドに腰掛ける事になった。
部屋には洗濯機が回る音と俺のタイプ音だけが響く。

「……何も聞かないの?」
以下略



6:名無しNIPPER[sage]
2016/09/09(金) 18:11:05.63 ID:hnFuSz2go
「あたしね、やっとここに居たいと思えるようになったんだ。だから……だから」

「ちょっと待て! たった1度や2度のミスで辞めさせる訳が無いだろ!」

志希が顔を上げ、心細げな目でこちらを見る。
以下略



7:名無しNIPPER[sage]
2016/09/09(金) 18:11:33.73 ID:hnFuSz2go
座卓に志希の分の紅茶を入れたマグカップを置き、俺は椅子に座る。
顔を上げて志希がマグカップを手に取る。

「熱いから気をつけろよ」

以下略



8:名無しNIPPER[sage]
2016/09/09(金) 18:12:08.19 ID:hnFuSz2go
「だから海外の大学に行くことにした。パパと同じものを学べば、パパが少しはあたしのこと見てくれるかなって。結局そんな事なかったんだけど。ギフテッドだなんて言われてたし、実際あたしも化学には自信あったし、ここにならあたしの居場所あるかなーとも思ったんだけど、大学にはあたしレベルの人間なんてゴロゴロいたし、特別な何かにもなれなかった。学ぶことは嫌いじゃなかったけど、大学にいる理由も無くなっちゃったし、辞めて日本に帰ってきちゃったんだけどね。実家に帰るつもりはないし、なんとなく都会の学校で女子高生でもやってみようかなって今の高校に入ったけど、やっぱりここでもあたしは平凡な女子高生でしかなかった」

「その時、街中で番組の撮影をしてる所を見て、アイドルに興味を持った志希を俺がスカウトした、と」

「ちょっと違うかな。あたしはアイドルに興味を持ったんじゃなくて、プロデューサーに興味を持ったの。あの時のプロデューサー、とっても良い匂いがしたから」
以下略



9:名無しNIPPER[sage]
2016/09/09(金) 18:12:43.22 ID:hnFuSz2go
ああ、そうか。
これまでの人生で、彼女には味方と呼べる人間がいなかったのか。
最初に彼女の味方になるべき両親は彼女を見放した。
そしてギフテッドとして大学へ入学した彼女は若すぎた。
若き天才、しかも他国の人間だった彼女に僻みや妬み嫉みが向けられる事は想像に難くない。
以下略



10:名無しNIPPER[sage]
2016/09/09(金) 18:13:16.37 ID:hnFuSz2go
「志希、俺は君を嫌ってなんかいないよ。確かに君は自由奔放だ。人の言う事は聞かないわライブ前に失踪するわ、俺の手に余る事も多々ある。でも君はアイドルを楽しんでる。初めて舞台に立った君を見て確信したんだよ、一ノ瀬志希をスカウトしてよかったって。それに、俺は一ノ瀬志希の最初のファンだぞ。そんな俺がどうやったら志希を嫌いになれるんだ? どうして君からアイドルである事を奪う必要がある?」

これは紛うことなき俺の本心だ。
俯いていた志希が顔を上げて俺を見る。
彼女の顔には、まだ不安の色が漂っていた。
以下略



11:名無しNIPPER[sage]
2016/09/09(金) 18:14:07.34 ID:hnFuSz2go
膝を抱えていた志希がベッドから降り立ち上がる。

「よし! 志希ちゃんのお悩み相談コーナー終わり!」

そこに居たのは、いつものように屈託のない笑顔の志希だった。
以下略



12:名無しNIPPER[sage]
2016/09/09(金) 18:14:33.92 ID:hnFuSz2go
「プロデューサー」

今日の疲れを洗い流すため、椅子から立ち上がり脱衣所へ向かおうとすると、志希に呼び止められた。

「どうした?」
以下略



13:名無しNIPPER[sage]
2016/09/09(金) 18:15:44.47 ID:hnFuSz2go
風呂から上がると、志希が布団もかけず、すうすうと寝息をたて、安らかに眠っていた。
ミニライブの疲れに心労もあったんだ。
今日くらい、ベッドは志希に貸してやるとしよう。
彼女に布団をかけてやり、部屋の電気を消す。
一服しようと鞄からタバコを取り出し、そこから1本だけ取り出して口に咥える。
以下略



14:名無しNIPPER[sage]
2016/09/09(金) 18:16:54.14 ID:hnFuSz2go
タイトルはそのままポルノグラフィティのロマンチスト・エゴイストから持ってきました
とても良い曲なので機会があれば是非聞いてみてください
お付き合いありがとうございました


15:名無しNIPPER[sage]
2016/09/09(金) 18:43:43.00 ID:+VS1kOgd0
おつ


16:名無しNIPPER[sage]
2016/09/09(金) 19:07:58.43 ID:Uzb/m/7bO
あのアルバム全然見かけないよな


17:名無しNIPPER[sage]
2016/09/30(金) 01:16:54.88 ID:Tfpgje2+o
一番好きなアルバムだ
乙でした


17Res/15.01 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice