1:名無しNIPPER
2016/09/18(日) 22:59:34.89 ID:7vcuwGwc0
私が目を覚ますと、そこは広大な荒地でした。
見渡す限り何も無く、ただ乾いてひび割れた大地のみが広がっています。
頬を撫でる生温い風。
口を開けて一息つくと、ひどく喉が乾きます。
舌を動かすと、砂の味を感じます。
ここは何処なんでしょうか。
そう考えても、自分にはなんの記憶もありませんでした。
目を覚ましてから考えた事や、目にした事象が空っぽの脳みそに刻まれていきます。
SSWiki : ss.vip2ch.com
2:名無しNIPPER
2016/09/18(日) 23:00:01.26 ID:7vcuwGwc0
自分が形作られていく。
それは今行われていることであり、これから先も終わることはないでしょう。
一つ、また一つと考え、感じる度に私の性質が変化していきます。
それにしても。
3:名無しNIPPER
2016/09/18(日) 23:00:41.66 ID:7vcuwGwc0
ひとまず、歩くことにしました。
それはとても簡単なことです。少なくとも、私にとっては。
右足を前に踏み出し、重心を移動します。
そして、左足を前に出し、重心を移動します。
4:名無しNIPPER
2016/09/18(日) 23:01:08.83 ID:7vcuwGwc0
空を見上げてみました。
地面を見ていても、同じような景色ばかりで退屈してしまいます。
微妙に霞みがかっているのか、空は不鮮明に映りました。
霞越しに灰色の雲がふわふわと浮かんでいるのが見えます。
5:名無しNIPPER
2016/09/18(日) 23:02:02.05 ID:7vcuwGwc0
だから、この世界はこんなにも薄暗いのでしょうか。
薄暗いというのは視覚的な問題では無く、感覚的な話です。
決して見辛いだとか、遠くまで見えないだとかそういうことではないのです。
あまりにも色彩が少なく、変化に乏しい大地。
空は濁っていて、陽の光も今は力無く私を照らすのみです。
6:名無しNIPPER
2016/09/18(日) 23:09:37.29 ID:7vcuwGwc0
この地面は決して柔らかな土ではありません。
大地の暖かさを感じることもなければ、草のなびく音に包まれるわけでもありませんでした。
乾いて、ひびの入った地面に寝転がることは決して心地よいこととは言えないでしょう。
それでも、私にはそれしか出来ないのです。
7:名無しNIPPER
2016/09/18(日) 23:10:17.77 ID:7vcuwGwc0
どれだけの時が過ぎたのでしょうか。
相変わらず、私の視界には荒れ果てた土地が広がり、空は濁ったままです。
今日も太陽は弱々しく私を照らし、生温い風が頬を撫でていきます。
右足を前に踏み出し、重心を移動したあと左足を前に踏み出す。
8:名無しNIPPER
2016/09/18(日) 23:10:58.54 ID:7vcuwGwc0
しかしそれでも、あまりに繰り返すと飽き飽きしてくるものです。
決して歩みを止めることはありませんでしたが、そういう時は考え事をします。
この世界には、時の流れがないように感じられました。
太陽は沈むことも昇ることも無く、常に同じ位置を保っています。
9:名無しNIPPER
2016/09/18(日) 23:11:36.07 ID:7vcuwGwc0
唯一、時を証明するものといえば私の脳みそくらいでしょうか。
今だって、新しい何かが刻まれています。
しかし、それも私にしかわかりません。
今も空は濁り、地面は枯れているのです。
10:名無しNIPPER[sage]
2016/09/21(水) 22:04:01.48 ID:4t0MzzBF0
はよ
11:名無しNIPPER[sage]
2016/09/21(水) 23:32:33.24 ID:NE1RlzCI0
あんまり慣れてない文体なので、めちゃくちゃ遅筆です(´・ω・`)
ちょっとずつあげてくのでご容赦くださいまし
12:名無しNIPPER[sage]
2016/09/21(水) 23:48:40.71 ID:NE1RlzCI0
果ての無いように感じていた、この荒野にも果てがありました。
終わりの無いものなんて無い、そんな言葉を何処かで聞いたような気がします。
水平線の先に、わずかに膨らみが見えました。
とても、とても些細な変化です。
13:名無しNIPPER[sage]
2016/09/21(水) 23:49:14.83 ID:NE1RlzCI0
ぺたぺたと足音を立てながら、今日も歩きます。
生温い風が髪を揺らしました。
僅かにですが、野草のような匂いを感じます。
この先には新しい世界が待っている、そう考えると期待が膨らみます。
14:名無しNIPPER
2016/09/21(水) 23:49:51.49 ID:NE1RlzCI0
なにせ、目標が目に見えたのですから。
少しずつ、本当に少しずつですが近付いているのが分かります。
今までとは違って、前に進んでいることを感じます。
時が流れているのです。
15:名無しNIPPER
2016/09/21(水) 23:50:20.27 ID:NE1RlzCI0
また少し距離が縮まります。
その膨らみは、山であることが分かりました。
どれほどの高さなのでしょう。
距離がある頃はあまり高くは見えませんでしたが、近付くほどにより高く見えます。
16:名無しNIPPER
2016/09/21(水) 23:50:46.13 ID:NE1RlzCI0
未だ知らぬもの。未知。
あの山にはどれだけの未知があるのでしょうか。
生温い風の中に、ほのかに何かを感じます。
今までに嗅いだことのない匂い。おそらくは、あの山からでしょう。
17:名無しNIPPER
2016/09/27(火) 11:09:50.69 ID:S9r6NgOs0
山を見つけてから、どれだけ歩いたのでしょうか。
私は、ようやく。山に辿り着くことが出来ました。
これが、植物の匂い。目の前には背の高い木や雑草が青々と茂っています。
そして、その草木の合間には、道。
18:名無しNIPPER
2016/09/27(火) 11:10:17.17 ID:S9r6NgOs0
足の裏にひんやりとした感触。
樹々に陽の光が遮られているからでしょうか。
この森自体の空気は冷たく感じました。
足の裏の、踏みしめた雑草はことさらに。
19:名無しNIPPER
2016/09/27(火) 11:10:44.36 ID:S9r6NgOs0
何度か繰り返すと、とても落ち着きました。
少し体が軽くなったように感じます。
傍にあった木に寄りかかって目を瞑ると、音がよりはっきりと聞こえます。
木々のざわめき、吹き抜ける風の音。
20:名無しNIPPER
2016/09/30(金) 18:19:20.09 ID:7EFMOkWf0
目を覚ますと、辺りの様子が少し変わっていました。
少し陽が射し、暖かくなったように感じます。
木々の隙間から空を見上げると、太陽が先ほどまでより少し昇っているのが分かりました。
木漏れ日が地面に複雑な絵を映し出し、揺れ踊るのが見えました。
21:名無しNIPPER
2016/09/30(金) 18:20:40.66 ID:7EFMOkWf0
私は再び歩き出しました。
きっと、この先には更に素晴らしいものがあると信じて。
木々の間、なだらかな勾配を持った道を登って行きます。
途中、水の音が聞こえました。
73Res/26.40 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。