過去ログ - 天の原ふりさけ見れば春日なる...
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23: ◆cDyTypz3/.[saga]
2016/10/04(火) 22:58:03.26 ID:NypoJ6GT0
直ちに駆逐艦が単横陣をとり、空母がその前に並ぶ。間隙を縫って狙われないように空母二隻が之の字運動を開始する。
斯くして本作戦最初の戦闘の火蓋が切って落とされたのである。
同時にそれは、今までもどうにかなってきたという経験が、慢心として戦場に顔を出したと皆が気づいた瞬間でもあった。
一九二六。
爆雷を投射しながら相変わらずの全速で南鳥島へ向けて突っ走る。
すでにこの約三十分の間に八本の魚雷が発射されており、危うく春雨が当たりそうになった瞬間もあった。
だが十分ほど前に延々と打ち続ける音波の中に一隻しか影がないのを白露が確認したので、どうやら一隻だけは沈めることができたらしい。
目的地到着予定時刻は〇二〇〇。
あと五時間以内にこの潜水艦を振り切らなくてはならない。
しかしこの約30分間、空母機動部隊は重要なことを見落とし続けていた。
ただでさえ全速30kn近くで走り続ける部隊を、水中でもせいぜい8kn程度が限界の潜水艦が艦隊と同じ距離のまま追い縋り続けられるはずがないのだ。
その異変に最初に気づいたのは、更に十分経ってからで、ソナー要員として索敵し続けていた白露だった。
ずっと打ち続けるの疲れるなぁと自分の中で思ったとき、ん?ずっと?とそこにようやく異変を感じ取ったのである。
白露「ちょっと、なんかおかしいよ」
時雨「ど、どうしたの?何かあるなら焦らさないで早く言って」
時雨の言葉が少し癪に障った白露が、声を大きくして言う。
白露「潜水艦が私たちを追い続けられるはずないの!なんかおかしくない!?」
どうしてもっと早くに気づかなかったんだろうと白露は悔やむ。
白露の報告に、すぐに思い当たる節があったのは赤城だった。
けれど、信じたくはなかった。これではまるで・・・。
赤城「・・・群狼作戦」
かつてドイツが行っていた通商破壊作戦。
偵察機から送られてきた敵艦隊の位置を基に、複数いる潜水艦のうち一隻が予測海域に移動、敵艦隊のその海域への侵入を確認したと同時に残りの潜水艦が艦隊を包囲しこれを撃沈する。
今回は偵察機がいないが、おそらく複数の艦が単独で敵索敵の任を負っているのだろう。
とは言うが、今まで水中探信儀には一隻しか反応がなかったはずなのに。
それにレーダーにも潜望鏡の反応はなかった。一体どうやって連絡をとったのか。
赤城「油断した・・・ッ」
そうだ、反応がなかったからといって安心なんてできない。今部隊は最大戦速で移動している。ソナーを打っても探知できる範囲は相当狭まっているのだ。そして駆逐艦が装備するレーダーは、水上艦ならそれなりの距離を探知できるが、潜望鏡となるとせいぜい5km。
完全に嵌まったのだ。敵の用意していた罠に。
敵がいることすら気付かずに、まんまと包囲網に突っ込んでいったのだ。
作戦会議で提督が主な脅威は潜水艦であると言っていたことを思い出す。恐らく提督もここまでだとは想定していなかった可能性が高い。
さっき感じた慢心が、完全に頭を出して部隊にそのツケを払わせようとしている。
赤城「皆さん、直ちに転針!0-4-5!急いでッ!」
飛んで火に入る夏の虫。
その虫は空母機動部隊。
このままいれば壊滅必至の状況で、活路を見出だすにはどうするか。
火傷を覚悟で迫り来る火の手の一角に飛び込むしかない。
おそらく前方にもっとも潜水艦が集中している可能性が高いから、違うところへ抜けなければ。
ここで選択を誤れば、作戦進行に支障を来すのは間違いない。しかし確かにここで逃げられれば勝ちだが、そうなったら後から来る補給艦隊はどうなる。赤城の脳裏を嫌な予感が過る。
白露達が空母を守るように輪形陣をとり転針を完了し、敵の包囲網の一角に猛然と突っ込み始めた刹那、周囲に集まった潜水艦隊が一斉に魚雷を発射した。
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