過去ログ - 水本ゆかり「清澄」
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17:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:31:22.32 ID:snFV7Fpq0

「ほら、まだ始まったばっかだから。最初はこんなもんだよ。アンテナ張ってて、アイドルめっちゃ好きです好き過ぎますーみたいな、ありがたいお客さんしか来ないから。これからだよ、ゆかりちゃんのロードは」

「ロード?」

以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:31:55.66 ID:snFV7Fpq0

「そう、です、ね」

 しかしそんな思いと裏腹に、私の口は、自然と言葉を紡いでいました。

以下略



19:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:32:45.74 ID:snFV7Fpq0

 あの一瞬。

 先のことを考えた、あの一瞬の内に、私は何かを取りこぼしてしまった。
そんな気がしてならなかったのです。
以下略



20:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:33:19.64 ID:snFV7Fpq0

         2

 朝は早く起きる。

以下略



21:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:33:53.88 ID:snFV7Fpq0

 放課後は事務所に足を運ぶ。
プロデューサーさんに挨拶して、スケジュールの確認や簡単な打ち合わせを済ませたら、社内の練習室でレッスンを受ける。

 ダンス、歌、表現力。
以下略



22:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:34:27.65 ID:snFV7Fpq0

 慣れない街に単身飛び込み、不安と驚きの荒波に揉まれながら繰り返した、歯車のように回る毎日。

 晴れの日も雨の日も、同じ景色を見ているようでした。
アイドルと名付けられたこの大きな装置の中で、私という部品が置かれた場所はひどく見通しが悪かったのです。
以下略



23:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:35:01.14 ID:snFV7Fpq0

 CDデビュー。

 それ自体が大変な喜びでしたが、同時に、歯車のひとつだった私にもようやく外が見えるのかと、わくわくして仕方がありませんでした。

以下略



24:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:35:50.77 ID:snFV7Fpq0

 ところが私は、そこから次の一歩を踏み出すことができなくなっていました。

 あの夜、お仕事の帰りに失くしてしまったもの。あの痛みの正体。
目に見えず、手の届かないところから、それが私に、ささやくようにこう尋ねるのです。
以下略



25:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:36:26.63 ID:snFV7Fpq0

          /

「できないのです」

以下略



26:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:36:59.78 ID:snFV7Fpq0

 制服のままでスタジオにいることも、

 片付けもせず膝に置いたフルートも、

以下略



27:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:37:33.74 ID:snFV7Fpq0

「全部って、何の」

「歌も、ダンスも……この前のレッスン、心配されてしまいました。体調が悪いのかと……でも、違うんです。ダメなんです。何かがはまらないのです」

以下略



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