13:名無しNIPPER[sage]
2016/10/19(水) 01:30:24.49 ID:QB1AagmFO
海未はこの静かな部屋に一人、ぽつんと残された。
聞こえるのは時計の秒針がカチカチと鳴る音だけ。
その音のする方を向くと、美しい装飾の施された時計が壁に掛けられてあった。
あまりに静かなので身じろぎ一つするのも躊躇われた。
14:名無しNIPPER[sage]
2016/10/19(水) 01:32:51.90 ID:QB1AagmFO
ピアノのそばまで来た。黒と白の鍵盤がずらりと並ぶ様は壮観。
光沢があって、つやつやしてるのが見ただけで分かる。
蓋の内側に目を移すと、金色に輝く様々な部品、無数の細い線があらわになっている。
一体どんな構造なのだろう。海未はまるで幼い子がはじめて見るものに興味を示すようにまじまじと見つめていた。
15:名無しNIPPER[sage]
2016/10/19(水) 01:33:46.21 ID:QB1AagmFO
そのとき、真姫がドアを開けて部屋に入ってきた。
「海未?」
「ごっ、ごめんなさい、勝手に触ってしまって」
16:名無しNIPPER[sage]
2016/10/19(水) 01:35:52.64 ID:QB1AagmFO
海未は少し気になっていたことを思い出した。
「さっきは、楽譜なしで弾いてたんですか?」
「さっき、って海未が来たとき?」
「はい」
17:名無しNIPPER[sage]
2016/10/19(水) 01:37:06.99 ID:QB1AagmFO
海未は突然のことに動揺を隠せなかった。
「私が、ですか?」
「そ。せっかくだし、何か1曲でも弾けるようになりたいと思わない?」
「とはいいましても・・・」
18:名無しNIPPER[sage]
2016/10/19(水) 01:38:33.56 ID:QB1AagmFO
「見本、みせてあげる」
そういうと、真姫は身を乗り出して、ゆっくり、とある曲のフレーズを弾いて見せた。
なじみのある曲の冒頭。これ、知ってるでしょ?と真姫は言う。
19:名無しNIPPER[sage]
2016/10/19(水) 01:39:52.30 ID:QB1AagmFO
「む、難しいですね……」
「海未、ちょっといい?」
そういって真姫は海未の右手をとる。海未は突然のことに一瞬びっくりした。
真姫は両手で海未の手をそっと丸める。
20:名無しNIPPER[sage]
2016/10/19(水) 01:41:25.35 ID:QB1AagmFO
「見てて」
そういって真姫は同じフレーズを弾いて見せる。
どうして一つのミスもなくこんなにきれいに弾けるのか、不思議でたまらなかった。
21:名無しNIPPER[sage]
2016/10/19(水) 01:42:24.11 ID:QB1AagmFO
タッタータタータータータタタター タッタータターター
タッタータタータータータタタター タタタタータタタタター
「……!」
22:名無しNIPPER[sage]
2016/10/19(水) 01:43:17.50 ID:QB1AagmFO
「それにしても、どうして私にピアノを?」
海未に尋ねられると、真姫は
「海未が羨ましいって言ってたから……その、教えてあげてもいいかなって。せっかく来てくれたんだし……ていうかごめん、後輩の私が偉そうにして」
23:名無しNIPPER[sage]
2016/10/19(水) 01:43:56.93 ID:QB1AagmFO
終わり
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