過去ログ - 【ペルソナ5 奥村春SS】春のまにまに
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61:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:31:34.94 ID:sIrnBUYZo
「……なんで、そう思うの? そんな素振り、見せてたかな」

「春が無理してるときってなんとなくわかるよ、自分のことに目を向けないで人のことばかり気にしてる。それに家から出て一人暮らしするって言ってたから。あそこだといろいろ思い出しちゃうからじゃないかな、違う?」

 彼はコーヒーを啜り、一息で話した。
以下略



62:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:32:30.60 ID:sIrnBUYZo
 彼は私の持っていたコーヒーを半ば奪い取ると、自分のものと並べて机に置く。それからベッドに戻り、

「おいで、春」

 と、手を広げた。
以下略



63:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:33:29.72 ID:sIrnBUYZo
「もう十分頼ってるよ。支えられてるのは私ばっかりだもん」

 私は少なくとも、年下とか年上とか関係なしに彼とは対等でいたいと思っている。彼の後ろを黙ってついていくだけでなく、並んで立ちたい。彼の向いているほう私も向いて、同じものを見て歩き続けたい。

「私もたまには甘えてもらいたいなぁ」
以下略



64:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:34:20.75 ID:sIrnBUYZo
 でも怪盗の姿は誰よりもスマートで、どこまでも格好いい憧れのヒーロー。

 さっき「おいで」と言ってくれた姿は、男らしくて優しくて、父のような包容力に溢れていた。

「……君って、ほんと不思議だよね。いろんな顔がある。……どれが君の本当の顔?」
以下略



65:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:35:22.32 ID:sIrnBUYZo
 これまでにも何度か聞かせてもらえた、褒められるよりも嬉しい言葉。何よりも聞きたい言葉。

 聴く度に私はドキッとして胸も頭も熱くなり、なかなか上手く話せなくなるぐらいなんだけれど、今は、違った。

 コーヒーが布に染み渡るように、ミルクが落ちてゆっくりと溶けていくように、私の中に広がっていった。
以下略



66:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:36:20.35 ID:sIrnBUYZo
「あはっ、ちょっと重いかな、私」

 何故か、初めて彼より少し優位に立てた気がする。私の心は完全に奪われちゃってるから、きっと気のせいなんだけど。

「……いや、そんなことない。嬉しいよ」
以下略



67:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:37:06.46 ID:sIrnBUYZo
「知ってる」

「たぶん、君が思ってるよりも、もっとだよ」

「どのくらい?」
以下略



68:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:38:12.06 ID:sIrnBUYZo
「お父様は会社でも従業員の人たちにそんな感じになって、私の人生すらも一人で決めちゃって……、辛かった。苦しかった。それでね、怪盗団にでもなんでも、なんとか昔のお父様に戻ってほしいなって思ってたところでモナちゃんに会って、あなたと、みんなと出会って、やっとちゃんと家族になれるって思ってたら……」

 そこで、喉の奥で感情の塊がつっかえて言葉が出なくなった。彼はそんな私の手を握り、深く頷いた。

 うん。ちゃんと話すよ。
以下略



69:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:39:29.33 ID:sIrnBUYZo
「…………私、独りは嫌だよ。寂しいよ……」

 耐えきれず嗚咽が漏れた。私はまた彼に包まれた。

「俺でよければずっと傍にいる」
以下略



70:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:41:10.27 ID:sIrnBUYZo
「なんて、伝えるの?」

「……いろいろ、かな」

 胸がしめつけられるような恋をして、心から好きな人ができました、とか。
以下略



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