1: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/09(水) 22:47:21.29 ID:XNNgxP530
原作:国木田独歩「画の悲しみ」より
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/09(水) 22:54:56.52 ID:XNNgxP530
小さい頃から絵が得意だった。
でも違うクラスのあいつはもっと絵が上手だった。
自分が自信を持って博覧会に出した絵なんかには皆目もくれず、あいつのかいたチョークのコロンブスに釘付けだった。
3: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/09(水) 23:05:15.76 ID:XNNgxP530
風車を描こう、と思った。
家を出て、堤を下りて、川沿いの草むらまで出ると、夏の終わりだというのに太陽がさんさんと輝いていた。
風車の見える草原まで来てみると、一人の少年が絵を描いていた。
4: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/09(水) 23:13:47.04 ID:XNNgxP530
なぜあいつがいる、どうして自分のより先に来ている。 と凄く癪に触った。
だとしてもこのまま家に引き返すことを考えると、もっと癪に触った。
そのまま棒のように突立っていても、あいつはまだ気がつかないようだ。
5: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/09(水) 23:24:12.56 ID:XNNgxP530
自分でも訳のわからないこと考えていても、彼は一心に絵を描いている。
草陰から出た膝に大きな画板を寄せ掛けて、柳の影が全身を覆っている。
葉の隙間から零れ落ちた光があいつの白い肌へ穏やかに透き通ってゆく。
6: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/09(水) 23:33:30.08 ID:XNNgxP530
写生に取り掛かっていると、不思議なことを感心に思った。
画板へ向かうと、彼奴をいまいましく思う気持ちは薄らぐ一方で、描く方に心を囚われてしまう。
彼は顔を上げては風車を見、また画板へ向かう。
7: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/09(水) 23:46:58.38 ID:XNNgxP530
そうしていると、彼は突然立ち上がり、その拍子にこちらの方を向いた。
そしてなんとも言いがたき柔和な顔をして、にっこりと笑う。
「君は何を描いているのだ、」
8: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/10(木) 00:02:42.94 ID:pmCOrODr0
描き始めたが、描いてるうちに彼をいまいましく思う気持ちは全く消え、かえってあいつがかわいらしくなってきた。
名前とクラスは知っているが、今までに喋ったこともなければ見かけたこともほとんどない同学年の男子の絵を描く、考えてみれば不思議なことだ。
そしてふと思う、もしかして自分はホモというやつではないのか。
9: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/10(木) 00:09:44.09 ID:pmCOrODr0
「おや、君はチョークで書いたね。」
「初めてだからまるで画にならなかった。 お前はチョーク画を誰に習ったんだ?」
「東京から帰ってきた従姉妹からね、でも習いたてだから僕にも上手く描けない。」
10: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/10(木) 00:20:34.13 ID:pmCOrODr0
話してみるとなかなか心地の良いもので、二人はすぐに仲良くなる。
『自分』は心から『彼奴』の天才に服し、『彼奴』もまた『自分』をまたなき人と親しんでくれた。
二人で画板を携え、野山を写生して歩くこともしばしばあった。
11:名無しNIPPER[sage]
2016/11/10(木) 00:22:20.55 ID:ckJpsn7mO
読んでる
12: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/10(木) 00:27:31.68 ID:pmCOrODr0
ところが自分が二十歳の時であった。
運命とは残酷な物、「彼女」が倒れたと連絡が来る。
自分には内緒にしろと言っていたこと、本当は三年前にでも危なかったとということを医者から聞く。
13: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/10(木) 00:31:19.92 ID:pmCOrODr0
次は13日を予定してます。
14:名無しNIPPER[sage]
2016/11/10(木) 00:32:51.95 ID:ckJpsn7mO
乙、期待してる
15:名無しNIPPER[sage]
2016/11/10(木) 01:09:22.24 ID:UJx77bVxO
おつ
16:名無しNIPPER[sage]
2016/11/10(木) 16:45:17.65 ID:UtU0D+Kr0
期待
17: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/13(日) 21:49:14.82 ID:N9xNQVeR0
故郷の風景はまったく違っていた。
駅の近くには大きなショッピングモールができて、人だかりが増えたようだ。
よく使っていた駄菓子屋はなくなり、カードショップがコンビニになっている。
よく訪れた野山にも道ができていた。
18: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/13(日) 21:57:07.16 ID:N9xNQVeR0
画板を片手に、あの草原を目指した。
風車を書こうと思った。 他の誰でもない「彼女」と書いた風車を。
堤を下りて、草むらまで出てみると、バランスを崩してこけてしまいそうになる。
冬の空気が息を白くさせる。
19: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/13(日) 22:08:24.70 ID:N9xNQVeR0
草原へとたどり着く。
心を重圧が襲い、目眩が起こる。大き過ぎる思い出が息を止めさせる。
そこにあるのは、止まった風車と、まっさらな画板と、ちっぽけな自分。
20: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/13(日) 22:16:18.68 ID:N9xNQVeR0
心行くまで絶望すると、闇の中から光が出てくる。
柳の木漏れ日が重圧を和らげる。
此方を望んで林を見る。
輝く日に、いつもの景色。
21: ◆Gm2PgccxcM
2016/11/13(日) 22:20:07.49 ID:N9xNQVeR0
1、実はドッキリだった。
2、タイムスリップで未来を変える。
3、自由案
>>21
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