11:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/08(木) 00:11:41.96 ID:aKR8yUbx0
そこにはちゃんとした理由があります。
愛梨さんとおしゃべりをしているみりあさんを見ているとよくわかります。
ああ、やはり、今日もみりあさんは美しい。
はりつやのある頬、水を弾くようなうなじ、白い肌に浮き出る鎖骨。
12:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/08(木) 00:12:22.47 ID:aKR8yUbx0
「あ! 愛梨ちゃんのプロデューサーさん! おはようございます!」
みりあさんがパタパタとこちらに駆け寄ってきたので、僕も膝を折って、目線の高さを合わせます。
「おはようございます。みりあさん」
13:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/08(木) 00:12:57.97 ID:aKR8yUbx0
「……さて、愛梨さん。今日の仕事の打ち合わせをしましょうか」
一日の活力を得た僕は愛梨さんに向き直ります。
しかし、愛梨さんは何やら難しい顔で僕を見ています。
とても珍しい表情で、それはまるで睨んでいるようにも見えました。
14:名無しNIPPER
2016/12/08(木) 00:13:36.06 ID:aKR8yUbx0
※ ※ ※
後日。
朝からどんよりとした天気でしたが、新しい企画書を八割方作り終え、もう愛梨さんはレッスンを終えただろうなと思いながら自販機にブラックのコーヒーを買いに行っていたときにみりあさんに声をかけられましたので僕は今日も元気で仕事が出来そうです眼福です。
15:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/08(木) 00:14:22.08 ID:aKR8yUbx0
全然よくありません。
なぜなら、みりあさんのスベスベな暖かい手で握られてしまっているからです。
その感触への感動と、急な展開に脳の処理が追いついていません。
できれば今、この手の平の感覚以外を脳の処理に充てたくないので、他の機能が停止してくれないかとすら思っています。
16:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/08(木) 00:15:02.43 ID:aKR8yUbx0
こぢんまりとした会議室は壁が所々剥がれ落ちている部分があり、年期と淋しさが漂っています。
窓のブラインドは下げられていて蛍光灯の明かりだけが部屋を照らしており、昼間にもかかわらず天気の悪さも相まって部屋全体に薄暗さを感じさせます。
ブラインドの横には愛梨さんが立っていて、こちらを見るとすこしほっとしたような表情をしました。
暖房はかかっているはずなのに、寒いのでしょうか、あるいは不安だったのでしょうか、自分の腕で身を寄せていました。
17:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/08(木) 00:15:33.45 ID:aKR8yUbx0
確かに、目の前の使い古された長机の上には、来客用の皿とラップに包まれたケーキが置いてあります。
苺の乗ったスタンダードなケーキで、部屋が薄暗い中で白のクリームが輝いて見えます。
愛梨さんのケーキはいつも絶品で、甘すぎるものは得意でない僕の口にも合うように作ってくれているそうです。
それにしても、なぜ今更この場所で?
18:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/08(木) 00:16:08.23 ID:aKR8yUbx0
やんわり断ってはいまずが、同時に、なるほどと感心していました。
『考えて行動する』『見られていることを意識する』『身体的接触を避ける』ことを考慮した上での結果なのでしょう。
確かに、スキンシップに関する件は、愛梨さんの意思の表れという意味で良い我が儘なのかもしれません。
そんな思考を巡らせている間に、愛梨さんは手際よくケーキとフォークを準備していました。
19:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/08(木) 00:16:44.04 ID:aKR8yUbx0
こんな表情を、初めて見ました。
愛梨さんなりに色々考えているのでしょう。
自身を天然と評する愛梨さんですが、やはり、決してそれだけではないようです。
唐突に脳裏に浮かんだのは、天然だけではなく実はしたたかで小悪魔的な面も持つアイドル。
20:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/08(木) 00:17:17.18 ID:aKR8yUbx0
「わかりました。では……いただきます」
愛梨さんの腕や吐息は震えています。
僕はそれすらも飲み込もうと、フォークの上に表現された十時愛梨を味わいました。
21:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/08(木) 00:17:45.45 ID:aKR8yUbx0
「ケーキはアイドルと似ていますね。そう思いませんか、愛梨さん」
「えっ?」
「苺やクリームに目が行きがちですが、その実、生地がしっかりしていないと味が浅いものになってしまいます」
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