15:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/01(日) 18:25:45.68 ID:YiqUyrv20
「文香ちゃん……その、理由を聞いても、いいでしょうか……?」
「……はい。私が先程まで読んでいた本に、『爽やかな汗の匂い』という表現が出てきたのです」
「爽やかな汗の匂い、ですか……具体的にどんな匂いかは分かりませんが、でも、イメージすることはできますね」
16:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/01(日) 18:27:27.95 ID:YiqUyrv20
「でも、アイドルとなってから、自分の思っていた以上に、自分の知っている世界が狭いことに気付きました。
いえ、それだけでなく、知識として知っていることでさえ、その半分も理解できていなかったことを知りました」
「……文香ちゃん……」
17:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/01(日) 19:35:41.73 ID:YiqUyrv20
「……分かりました。文香ちゃんの熱い気持ち、しっかりとこの胸に、受け止めましたっ」
「! では……」
「えっと、すごく恥ずかしいです……けどっ。文香ちゃんのためなら私、協力します!!」
18:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/01(日) 19:36:54.58 ID:YiqUyrv20
鷺沢文香からの今一度の問い掛けに対しても、日野茜はあくまで強気に答えてみせる。
その表情は恥じらいを隠すかのようにぎこちなく、しかしそれは同時に、彼女の覚悟の大きさをも示していた。
対人経験の豊富でない鷺沢文香も、目の前の彼女が乙女としての羞恥を必死で堪えて引き受けてくれたことを感じ取り、理解した。
だからこそ、胸の内からは自然と、感謝の言葉が浮かび上がってきた。
19:名無しNIPPER
2017/01/01(日) 19:54:44.40 ID:flOZjWeVO
大晦日と新年にかけてこんなSS書くなんて……
遅れて来たサンタさんかな
20:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/01(日) 21:06:21.12 ID:YiqUyrv20
「い、いえいえっ、文香ちゃんは同じアイドルの、大切な仲間ですから!! 仲間のためならこれくらい、何てことないですよ!!!」
日野茜は、笑顔でそう言い切ってみせる。
そこまで感謝される程のことではない、と。
――恥じらいの窺える、ぎこちない、強張った笑顔。
21:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/01(日) 21:11:38.97 ID:YiqUyrv20
「……」
「……」
二人は照れの混じった笑みを投げ合い、しばしの間、見つめ合う。
22:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/01(日) 21:15:50.97 ID:YiqUyrv20
「え、えと、はっ、恥ずかしいので!! その、ゆっくり、ゆっくりでお願いします!!」
先程よりも顔を一層真っ赤に染め上げながら、日野茜はせめてと心の準備期間を求める。
それが拒絶の言葉などではなかったことに鷺沢文香は安堵し、そして、優しく頷いた。
23:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/01(日) 21:19:42.20 ID:YiqUyrv20
「……っ!!」
鷺沢文香の両手が肩に触れた瞬間、日野茜の身体がビクっと、緊張で震えた。
顔の赤らみは増し、力の入った眉は絵に描いたかの様に八の字を形作っている。
24:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/01(日) 21:24:08.67 ID:YiqUyrv20
「それでは、茜さん。……失礼、します」
「――っ!! は、はいっ……」
果たして鷺沢文香は、行為に踏み切った。
互いの頬同士を触れ合わせる様な形で、日野茜に顔を近付ける。
25:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/01(日) 21:34:43.32 ID:YiqUyrv20
そんな日野茜の緊張は、勿論鷺沢文香にも伝わっていた。
もし逆の立場だったならと考えると、やはり近い内にお返しをしなくてはならないと思わせられた。
しかし行為の最中、鷺沢文香の『知』は、そんな理性を置き去りにしていた。
日野茜の匂いを嗅いだ彼女の意識は、深く、夢中の底へと沈み込んでいた。
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