過去ログ - 終わらない物語が嫌いな僕と余命が短い女の子の話
1- 20
67: ◆eZMycVsOYY[saga ]
2017/01/08(日) 22:28:45.35 ID:O1Z9DSgO0
 食器を洗い終わり、もともと身支度が整っていた僕らは、そう時間がたたないうちに外へ出た。
 今日は暑すぎず程よく風が吹いていたので、散歩日和だった。体を冷やすとよくないので、彼女に「寒くない?大丈夫?」と何度も聞いてしまった。「心配しすぎですよ」と彼女は笑った。

 少し小さなショッピングモールまではほぼ一方通行でいけるが、その道のところどころで本屋やコンビニ、そこそこ大きい神社がある。
 彼女は道の途中で見かけた神社に興味を持ったのか「行ってみたいです」と僕に言った。今まで彼女は何をするにしても遠慮がちで、昨日なんかは街で店を見るたびに「見てもいいですか」と確認をとるほどだった。
以下略



68: ◆eZMycVsOYY[saga ]
2017/01/08(日) 22:30:43.74 ID:O1Z9DSgO0
 神だとか仏だとかを日常的に祀る習慣がないため、そういったものを意識することはあまりなかった。学生の頃はよくテスト返却の度に「神よ・・・」と祈っていたが。そんな都合良く神は働かなかった。

 しかし神社のなかに入ってみるとなかなかにして神聖な空気が漂っていた。9月という人々にとってはあまり祈願することがない季節だからか、人はほぼいないに等しかった。

 賽銭箱にお金を入れ、「彼女の病気が奇跡的に治りますように。母さんが元気でいてくれますように。父さんが怪我や病気をしませんように」と強欲なまでに願い事をした。
以下略



69: ◆eZMycVsOYY[saga ]
2017/01/08(日) 22:48:32.10 ID:O1Z9DSgO0
 お祈りをしたあと、僕らは神社で売っていたお守りを買った。お守りなんて買うのは大学受験以来だが、健康を祈るお守りは持っていて損はしないだろう。

 彼女はお守りを買うときに、「ちょ、ちょっとあっちを向いててください」と僕に言った。何を買ったのかは知らないけど、どうか彼女に神の加護があるといいなと思った。


以下略



70: ◆eZMycVsOYY[saga ]
2017/01/08(日) 22:49:22.31 ID:O1Z9DSgO0
神社をあとにしながら、てくてくと彼女と歩いた。

「神社なんて久しぶりに来たよ」

「私もです。空気が、とても美味しかったですね」
以下略



71: ◆eZMycVsOYY[saga ]
2017/01/08(日) 22:55:30.26 ID:O1Z9DSgO0
「今日も、面白いことが日記に書けそうです。」

 彼女は日記を書いているのか。今まで一言も言わなかったから知らなかった。

「日記書いてるんだ」
以下略



72: ◆eZMycVsOYY[saga ]
2017/01/09(月) 01:20:33.47 ID:yOhGu/Zb0

 普段どうってことなく見過ごす風景も、彼女がいれば楽しくなるもので。小さな雑貨屋や隠れ家的な雰囲気のあるカフェ、はたまたくたびれたバッティングセンターなど、彼女はたくさんのものを発見した。
 
 普段病室にいる分、何もかもが新鮮に見えるのだろう。知らないからこそ、人より多くのことを発見できるのはいいことだと思った。

以下略



73: ◆eZMycVsOYY[saga ]
2017/01/09(月) 01:23:54.67 ID:yOhGu/Zb0
 さっきまでの彼女は、服屋へ寄っても売られている服を自分に合わせて僕にみせるだけで、試着しようとはしなかった。けれども今は店員さんと話しながら試着室へ向かっている。

 男一人が女性向けの服屋で待機するのは少し気恥ずかしさがあったが、スマホを適当にいじって時間をつぶすことにした。

 それから少しして彼女が試着室から出てきた。彼女は秋らしい色のワンピースに身を包んで、
以下略



74: ◆eZMycVsOYY[saga ]
2017/01/09(月) 01:27:53.62 ID:yOhGu/Zb0
「僕が買うよ」と店員さんを呼ぶ。少し強引にいかないと彼女は買う事すらやめてしまいそうだったから。

 会計を済まし、新しい服を着た彼女はきまりが悪そうだった。

「あのお店、昨日も見つけたんです。ショーウィンドウに並んでいた服が可愛くて。値段をちらって見て諦めたんです。だけどここにもあったから、つい未練がましく見ちゃって・・・」
以下略



75: ◆eZMycVsOYY[saga ]
2017/01/09(月) 14:01:43.13 ID:yOhGu/Zb0
 ショッピングモールからバスで帰宅し、家に着いたのは夕方頃だった。行きの時点で結構長い距離を歩いていたので、帰りもその長い道(しかも上り)を歩くことは厳しいと思ったからだ。

 家に着いてから、彼女は鏡の前で自分の姿を機嫌良く見ていた。今まで見た彼女の姿の中で最も幸せそうだった。

「えへへ、ありがとうございました。まだ、お礼言ってなかったから」と満面の笑みで言われた。
以下略



76: ◆eZMycVsOYY[saga ]
2017/01/09(月) 14:08:54.23 ID:yOhGu/Zb0
 病院ではさすがに病衣だろう、などと思いながら、彼女の様子を眺めていた。
 
 そういえば、と思い出し彼女に、
「父さん、今日遅くなりそうって連絡来てたから、今日は二人でご飯食べようか」と伝えた。

以下略



113Res/50.94 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice