11:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:35:44.78 ID:1HyDqIB70
「焼きそば。食べる? 多すぎて食べきれないよ」
「なら、一口頂戴?」
12:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:36:51.86 ID:1HyDqIB70
帰る前にこれだけと、彼女は大きな綿あめを買った。
左手でふわふわをちぎって、小さな口でそれを食む。
13:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:38:07.95 ID:1HyDqIB70
「みんなどうして向こうに行くのかしら。なにかあるの?」
「花火があるんだ」と私は答えた。
14:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:38:59.26 ID:1HyDqIB70
「観に行こうよ、花火。そこの川から綺麗に見えるんだ」
ほら、と右手を出せば、そろりと左手が差し出される。掴むと、びっくりするくらい小さかった。
15:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:40:16.09 ID:1HyDqIB70
☆
思っていたよりも、河川敷で花火を待つ人は少なかった。
16:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:41:05.78 ID:1HyDqIB70
「真っ暗でしょ? なにも見えない。目が慣れたらなにか見えるようになるかと思ってたのよ」
「なにも見えないよ。多分これからも」
17:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:42:38.63 ID:1HyDqIB70
奏はもう小さくなった綿あめをひとつちぎって、口に入れる。
美味しいのね、と言って、最後のひとかけらをちぎる。
左手の人差し指と親指で摘んだふわふわを、今度は私の口に押し付けた。「……甘いね」
18:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:43:50.28 ID:1HyDqIB70
わざとらしいくらいに物の無かったあの部屋も、笑い方も、その涼しげな表情も。
彼女の嘘はいつだって優しくて、それでも、自分の一番柔らかいところを守る仮面なんだろう。
誰でも受け入れるその嘘は、奏が誰も受け入れていないことの証明のように思えた。
19:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:46:15.60 ID:1HyDqIB70
今から綺麗なものを観ようよ。
私はそう言った。もうすぐ八時半、お祭りは初めてと奏は言っていた。
20:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:47:16.23 ID:1HyDqIB70
「……ねえ、どうかしたの? 凛がそんなに」
奏と目が合う。
レンズ越しの目が小さく揺れている。
21:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:48:50.39 ID:1HyDqIB70
真っ黒だった空に、大きな色が飛び散った。
まるで水風船が弾けたようだと思った。
その後一拍おいて、ドン、と音が響く。
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