過去ログ - 魔術士オーフェン無謀編・死にたい奴から前に出ろ!
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20:1[saga]
2017/04/15(土) 02:52:01.96 ID:Ip5evVVC0

「肌着がまだ濡れてて気持ち悪いんだけど」

「そんなもん俺にどうしろってんだ」

 厚手のスーツの下にまで熱を届かせるということになれば、どうしたって火傷するほど出力を高めるか、長時間魔術を維持するほかない。

 効果を長時間持続させる、ということに関して音声魔術は不向きなのだ。かといって、何回も魔術を使えば割に合わないほど疲労する。

 半眼で呻くオーフェンに、コンスタンスは通りの向こうを指さした。

「あっちの下着屋さんで、替えを買ってきてくれもいいわよ。オーフェンのお金で」

「分かった。2000度もあればきっと乾くよな?」

「……ま、まあ風邪は引かなくなったわよね。それが重要よ、うん」

 オーフェンの言葉に――というよりも、その右手に灯った火球に――コンスタンスはやや表情を青くして、発言を撤回した。

 追従するように、オーフェンも頷く。

「そういうこった。お前が風邪を引くと、やっぱり寂しいからな」

「ちょ、ちょっと。さっきからどうしたのよ、オーフェン。変なモノでも食べた?
 あ、きちんとした人間が食べるようなランチを摂取したせいね!?」

「おいおい、酷いな。俺はただ友人であるお前を心配してるだけだぜ?」

 朗らかに笑って、オーフェンはコンスタンスの肩を優しく叩いた。続ける。

「お前も苦労してるよな。頑張ってるのに、世間はそれを認めてくれない。分かるぜ。辛いよな、コギー」

「う、ううぅぅぅ。そうなのよ。部長はわたしを苛めるし、署員は憐れみの目でわたしを見てくるの。
 分かってくれるのね。わたし、別に好きで失敗ばっかりしてるわけじゃないの」

 何かが琴線に触れたらしい。涙を浮かべてそう言ってくるコンスタンスに、オーフェンは深々と頷いた。
 同時に肩を掴んでいる方とは逆の手を使って、さっきそこで貰ったポケットティッシュを引っ張り出す。

「ああ、お前はまったく悪くない。ほら、涙を拭けよ」

「うぅぅぅ、ありがとうオーフェン。わたし、あなたのこと誤解してたみたいね。
 人に迷惑をかけるしか能のないダメ人間達をビーカーに入れて一晩おいておいたら、
 その中でも一番底の方に沈殿してそーなクズの極みだと思ってたわ」

「はっはっは」

 笑うことで誤魔化して――大分乾いた笑いだったが――オーフェンは咄嗟の破壊衝動を無理やり飲み込んだ。
 破壊的な魔術の構成も、効果的に殴るための体重移動も今は忘れておく。


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