過去ログ - 安斎都「ドレスが似合う女」
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32:名無しNIPPER[sage]
2017/04/20(木) 01:14:40.03 ID:+JwmcPshO
読んでるから気にせず続けてくれ


33:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 02:17:03.02 ID:0eIMi64y0
 もう一度高垣さんの部屋に入りたい。そんな欲望が頭をよぎり、私は躊躇うことなく再び部屋に侵入した。今度は、プロデューサーさんと一緒じゃない。
 部屋の様子は全く変わっていなかった。このままずっと、この部屋は高垣さんの部屋として、残り続けるのかもしれない。高垣さんの死の気配を、残したままで。
 そんな感傷に浸りながらも、私は迷わず机の引き出しに近づいた。以前、調べなかった場所だ。あの時は、本気で調査をするつもりはなかったし、まだ私にも良心が残っていたから。
 全部で3段。1段目をそっと開けた。裁縫セットと、大小様々なボタンが縫い付けられた布が入っている。ところどころ、赤い斑点が散っていて、必死な練習の後がうかがえる。
 2段目には、なんとあの香水が入っていた。日にちが経っているせいか、うっすら埃をかぶっている。中身は、半分以下になっている。
以下略



34:名無しNIPPER[sage]
2017/04/20(木) 06:14:21.68 ID:KPQUe0GPO
バックをバッグと間違えるようなアホにも配慮してやらないといけないとは投稿者も大変だな


35:名無しNIPPER[sage]
2017/04/20(木) 09:09:54.20 ID:86abSHqlo
こういうSS結構好き


36:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 10:42:16.01 ID:0eIMi64y0

「これは問題だよ…大問題だ」
 会議室で、部長は冷たく言い放った。アイドルをやめなきゃいけないかも、と私は脅えた。故人の部屋に無断で侵入し、部屋を荒らし、物を持ち去ろうとした。いや、実際に持ち帰ってしまったものもある。一歩間違えなくても犯罪だ。
 犯罪者という発想に、私は恐怖した。けれど、妙なおもしろさも感じた。探偵が犯罪者、というジョークを高垣さんは笑ってくれるだろうか。
 私のそばにはプロデューサーさんがいた。私の軽率のせいで管理責任を問われているのだ。彼は、私のミスで相手メディアに謝罪するときと、まったく同じ表情で部長の言葉に耳を傾けていた。私は、プロデューサーさんを疑っていたことを少し忘れて、申し訳なく思った。
以下略



37:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 10:56:30.67 ID:0eIMi64y0
 「都は都なりに、楓さんの死について知ろうとしているんです!!
都だけじゃない、みんなも楓さんの死に納得していない! 俺だってそうです!
どうして楓さんが死ななきゃいけないんだ!? どうして!?
それが分からなきゃ、俺達は前を向くことができないんですよ!
一歩だって、前に進むことができないんですよ! 」
以下略



38:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 11:10:24.26 ID:0eIMi64y0

 部長から解放されたあと、私はプロデューサーさんに尋ねた。
「プロデューサーさんは、高垣さんと、高垣さんのプロデューサーどっちが好きなんですか?」
 私、という選択肢は入れなかった。
「はえ?」
以下略



39:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 12:19:24.29 ID:0eIMi64y0
 プロデューサーとアイドルの関係としてはまずい。下衆なメディアだったらスキャンダルに発展させかねない。それでも、高垣さんのプロデューサーは周りに自慢せずにはいられなかった。私も気持ちはわかる。あんなに素敵なひとが自分のために何かをしてくれるなんて、うれしくてしょうがないと思う。
「だから、彼が楓さんからスーツを選んでもらったと聞いたとき、嫉妬した。そして同じものを買った。“自分も彼女に選んでもらった”と思うために。
 もしくは…その、彼と同じものを身につけて…その…」
 私はプロデューサーさんが同性愛者だと認めるのを怖がっている。その理由を…ほんのさっき気づいた。
「あと、あの香水です。プロデューサーさんは、“あの部屋に残っていた”というだけで、高垣さんのプロデューサーを連想した。実際は、シトラスの香水なんて何百種類もありますし、似たような香水をつけて、高垣さんの部屋に出入りしていたアイドルだっていたでしょう。だから普段香水をつけないプロデューサーさんが、すぐに誰のものか気付くはずがないんです」
以下略



40:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 12:20:20.66 ID:0eIMi64y0
「川島さんから聞いたのですが、高垣さんのプロデューサーがシトラスの香水をつけていたことは間違いありません。そしてその香水は、私が見つけた香水である可能性が非常に高いんです。あの香水は、高垣さんが初めてキャンペーンガールの仕事を手に入れたときのものだったから…。高垣さんのプロデューサーは香水をつけることで、高垣さんとの絆を感じていたのかもしれません」
 たぶん高垣さんのプロデューサーは、高垣さんのことを愛していた。そして、高垣さんの方も。机と、引き出しの布に残っていた血の斑点が、それを物語っている。
「それで、プロデューサーさんも同じものを購入した。高垣さんとの絆を、自分も手に入れるために。もしくは、えっと…その、いつでも彼と同じ香りでいるために。好きなひとのもの、同じものを身にまとっていると、安心するから…。 
 でも、プロデューサーさんは香水をつけて歩くようなことをしなかった。2人にバレるのが、こわがったから」



41:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 12:22:25.39 ID:0eIMi64y0
 だから、香りだけでは高垣さんのプロデューサーとは分からなかったのだろう。憧れで購入したものの、ほとんど使っていなかったのだ。それで2段目にあった香水瓶がプロデューサーさんのものではないとわかる。あの中身は、半分以上に減っていた。
「プロデューサーさんは、高垣さんが亡くなったあと、“2人に何かあったんだ”と思った。そして、私が高垣さんの部屋に入るのを許した。“都なら、真相にきづくかもしれない”って…プロデューサーさんは、探偵としての私を信じてくれた…!」
 だからプロデューサーさん、私もあなたを信じます。
 プロデューサーさんは、私の推理を、いや、私の言葉を静かに聞いていた。そして話が終わると、目を閉じて、口を開いた。
「…俺は高垣楓というアイドルを、1人の女性として愛していた。理由は、言わなくてもわかるかな」
以下略



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