37:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 10:56:30.67 ID:0eIMi64y0
「都は都なりに、楓さんの死について知ろうとしているんです!!
都だけじゃない、みんなも楓さんの死に納得していない! 俺だってそうです!
どうして楓さんが死ななきゃいけないんだ!? どうして!?
それが分からなきゃ、俺達は前を向くことができないんですよ!
一歩だって、前に進むことができないんですよ! 」
38:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 11:10:24.26 ID:0eIMi64y0
部長から解放されたあと、私はプロデューサーさんに尋ねた。
「プロデューサーさんは、高垣さんと、高垣さんのプロデューサーどっちが好きなんですか?」
私、という選択肢は入れなかった。
「はえ?」
39:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 12:19:24.29 ID:0eIMi64y0
プロデューサーとアイドルの関係としてはまずい。下衆なメディアだったらスキャンダルに発展させかねない。それでも、高垣さんのプロデューサーは周りに自慢せずにはいられなかった。私も気持ちはわかる。あんなに素敵なひとが自分のために何かをしてくれるなんて、うれしくてしょうがないと思う。
「だから、彼が楓さんからスーツを選んでもらったと聞いたとき、嫉妬した。そして同じものを買った。“自分も彼女に選んでもらった”と思うために。
もしくは…その、彼と同じものを身につけて…その…」
私はプロデューサーさんが同性愛者だと認めるのを怖がっている。その理由を…ほんのさっき気づいた。
「あと、あの香水です。プロデューサーさんは、“あの部屋に残っていた”というだけで、高垣さんのプロデューサーを連想した。実際は、シトラスの香水なんて何百種類もありますし、似たような香水をつけて、高垣さんの部屋に出入りしていたアイドルだっていたでしょう。だから普段香水をつけないプロデューサーさんが、すぐに誰のものか気付くはずがないんです」
40:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 12:20:20.66 ID:0eIMi64y0
「川島さんから聞いたのですが、高垣さんのプロデューサーがシトラスの香水をつけていたことは間違いありません。そしてその香水は、私が見つけた香水である可能性が非常に高いんです。あの香水は、高垣さんが初めてキャンペーンガールの仕事を手に入れたときのものだったから…。高垣さんのプロデューサーは香水をつけることで、高垣さんとの絆を感じていたのかもしれません」
たぶん高垣さんのプロデューサーは、高垣さんのことを愛していた。そして、高垣さんの方も。机と、引き出しの布に残っていた血の斑点が、それを物語っている。
「それで、プロデューサーさんも同じものを購入した。高垣さんとの絆を、自分も手に入れるために。もしくは、えっと…その、いつでも彼と同じ香りでいるために。好きなひとのもの、同じものを身にまとっていると、安心するから…。
でも、プロデューサーさんは香水をつけて歩くようなことをしなかった。2人にバレるのが、こわがったから」
41:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 12:22:25.39 ID:0eIMi64y0
だから、香りだけでは高垣さんのプロデューサーとは分からなかったのだろう。憧れで購入したものの、ほとんど使っていなかったのだ。それで2段目にあった香水瓶がプロデューサーさんのものではないとわかる。あの中身は、半分以上に減っていた。
「プロデューサーさんは、高垣さんが亡くなったあと、“2人に何かあったんだ”と思った。そして、私が高垣さんの部屋に入るのを許した。“都なら、真相にきづくかもしれない”って…プロデューサーさんは、探偵としての私を信じてくれた…!」
だからプロデューサーさん、私もあなたを信じます。
プロデューサーさんは、私の推理を、いや、私の言葉を静かに聞いていた。そして話が終わると、目を閉じて、口を開いた。
「…俺は高垣楓というアイドルを、1人の女性として愛していた。理由は、言わなくてもわかるかな」
42:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 12:36:44.46 ID:0eIMi64y0
私が集めた情報は誘導を受けていない。これで、高垣さんのプロデューサーが部屋にいたことを確信できたが、いちばん重要なことがわかっていない。
高垣楓は、なぜ自殺を図ったのか。
高垣さんのプロデューサーが、死の直前に部屋に入った。そして高垣さんが死んだ。この2つの間にあった出来事。
警察が自殺と判断したということは、外傷がなかったということ。つまり高垣さんは、直接的な暴力を受けたわけではない。だとすれば、自殺の原因は、何か強い衝撃を与えるような間接的な行動、あるいは言葉だと考えられる。けれど、これは形に残らない。その正体を知っている高垣さんは、その衝撃を1人で受け止めきれず、亡くなってしまったのだから。
ようやくもらった、探偵アイドルとしての仕事の合間にも、私は高垣さんのことばかり考えていた。
43:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 12:53:38.60 ID:0eIMi64y0
「…ええっと…フィリップ・マーロウの活躍は…色々な方が…翻訳しています…。有名なものでは…村上春樹さん…と…清水俊二さん…このお二方ですが…彼らの訳は…マーロウのやさしさが…わかりやすく…伝わってきます。一方で…生島治郎さんのマーロウは…ハードボイルド小説らしい…猛々しさが…伝わってきます…このちがいが…悪いというわけではなく…訳者によって…主人公の印象がかわる…興味ぶかい…」
マーロウの話は、鷺沢さんらしく脱線していた。
鷺沢さんだったら…どこかの古書店員のように事件を解決してくれるかも…。そんな不真面目な想像をしながら、私は鷺沢さんの話を聞きつづけた。
44:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 13:16:31.81 ID:0eIMi64y0
「ありがとうございました! 私には…小説をじっくり読む習慣がなくて」
「いえ…私も楽しかったです…」
番組が終わったあと、控え室で鷺沢さんにお礼を言った。実際、鷺沢さんのレクチャーがなければアイドル生命が絶たれるところだった。
「推理小説や探偵小説は……読むのが難しいもの…ばかりですから…小説が好きという方でも…あまり…好まれないジャンルです…。でも…今日…安斎さんが…興味を持って…くれたなら…うれしいです…」
それでも、なかなか小説を読む時間がとれませんね、と私が言うと、鷺沢さんは、
45:名無しNIPPER[sage]
2017/04/20(木) 13:38:21.01 ID:9Ks+JvI7O
読みにくい
あと作者叩かれたからって自演はみっともないぞ
46:名無しNIPPER[sage]
2017/04/20(木) 14:01:39.87 ID:+WZKq/JKo
作者じゃないけど面白いし気にならんぞ
このまま続けてどうぞ
47:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 14:18:57.40 ID:0eIMi64y0
私は、高垣さんのプロデューサーを人気のない会議室に呼び出した。もちろん、私のプロデューサーさんも一緒に。なにせ私には、バリツや柔道の心得がないから。
高垣さんのプロデューサーは、すでに死んだような容姿になっていた。頰はこけ、髪はぼさぼさ。目は、どこを見ているのかわからない。足つきもふらついていて、とても仕事ができる状態ではないように見える。
「なんだ…安斎。楓の死について話すって…お前が何を知ってるんだ」
まどろんだような瞳の中に一瞬灯った警戒の色を、私は見逃さなかった。
「高垣さんは、子どもを妊娠していた」
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