27:名無しNIPPER[saga]
2017/04/19(水) 23:05:04.99 ID:t0Az6vrk0
プロデューサーとアイドル。シトラスの香水、ボタン、ジャケット、口論。レッスンも仕事もない休日、公園でハッカのパイプを吹かしながら、私は物思いにふけっていた。
いままでの情報をまとめると、高垣さんのプロデューサーが彼女の死の直前に部屋にいた可能性がある。しかし、それでもやはり他殺にこじつけるのは無理があった。
たとえば高垣さんをベッドに寝そべらせた状態で、無理やり睡眠薬と大量のお酒を飲ませれば、必ず身体のどこかにあざや、擦り傷などがつくだろう。警察としても、それを見逃すはずはない。あのボタンが部屋に残っているくらいだから、死体から自殺であったことは明らかなのだろう。
そうなると、この一件は自殺とみて間違いない……ただ、自殺に至る経緯だけが分からない。高垣さんの死の理由がわからないかぎり、彼女を愛した他のアイドルも、ファンも、立ち直ることができない。私は自分の好奇心に、そういう大義を見つけ、調査を続行することに決めた。
ただ、なんとも言葉にできない違和感を感じる。情報の収集が、なにかおかしい。
28:名無しNIPPER[saga]
2017/04/19(水) 23:16:23.57 ID:t0Az6vrk0
プロデューサーとアイドル。シトラスの香水、ボタン、ジャケット、口論。レッスンも仕事もない休日、公園でハッカのパイプを吹かしながら、私は物思いにふけっていた。
いままでの情報をまとめると、高垣さんのプロデューサーが彼女の死の直前に部屋にいた可能性がある。しかし、それでもやはり他殺にこじつけるのは無理があった。
たとえば高垣さんをベッドに寝そべらせた状態で、無理やり睡眠薬と大量のお酒を飲ませれば、必ず身体のどこかにあざや、擦り傷などがつくだろう。警察としても、それを見逃すはずはない。あのボタンが部屋に残っているくらいだから、死体から自殺であったことは明らかなのだろう。
そうなると、この一件は自殺とみて間違いない……ただ、自殺に至る経緯だけが分からない。高垣さんの死の理由がわからないかぎり、彼女を愛した他のアイドルも、ファンも、立ち直ることができない。私は自分の好奇心に、そういう大義を見つけ、調査を続行することに決めた。
29:名無しNIPPER[saga]
2017/04/19(水) 23:23:11.75 ID:t0Az6vrk0
「えっと……そのスーツ、ずいぶん綺麗にされているんですね」
私は気まずくなって、話を別の方向へ逸らした。いや、“私にとっての”本筋に戻した。
「んん? これかあ。近くのゴミ捨て場で食いもん漁ってたら、偶然見つけてな。まだ着れるから、ちょちょっと直して拝借した。…まったく、まだ使えるもん捨てるとは、人間がなっとらん」
ゴミを漁るのは人間としてどうなんでしょう、とは言わなかった。
最近スーツを変えた高垣さんのプロデューサーと、スーツを手に入れたホームレス。それだけなら何とも思わなかったが、スーツがバラバラに切り裂かれていたのが気にかかる。
30:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 00:30:25.37 ID:0eIMi64y0
私は、自分の調査能力を過信していない。そもそも、この調査自体ほんの退屈つぶしで始めたものだ。
しかし私の手元には、それなりに情報が集まってきている。しかも、全てが高垣さんのプロデューサーにつながる情報。私はそれを偶然だとは思えない。
高垣さんは寮に住んでいた。したがって、他のアイドルが部屋をたずねてくることもあったはず。高垣さんと高垣さんのプロデューサーが並々ならぬ関係だったとしても、他のアイドルの方が高垣さんの部屋に出入りしていただろう。2人の関係がバレるのを恐れていたら…の話だけど。したがって、私が部屋にお邪魔したときには、高垣さんのプロデューサーよりも、他のアイドルの痕跡を見つける方が自然だ。
私は“偶然”高垣さんのプロデューサーにつながるものばかりを発見している。そうなると、怪しいのは私のプロデューサーさんだった。
そもそも、なぜ真面目を絵に書いたようなプロデューサーさんは、高垣さんの部屋の調査を許したのか。自分で言うのもなんだけど、ワガママでやっていい範囲を超えている。
31:名無しNIPPER[sage]
2017/04/20(木) 00:47:41.61 ID:0nAmjNN1O
行間開けて改行したら?
ハッキリ言って一目でブラウザバッグされるタイプだぞ
32:名無しNIPPER[sage]
2017/04/20(木) 01:14:40.03 ID:+JwmcPshO
読んでるから気にせず続けてくれ
33:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 02:17:03.02 ID:0eIMi64y0
もう一度高垣さんの部屋に入りたい。そんな欲望が頭をよぎり、私は躊躇うことなく再び部屋に侵入した。今度は、プロデューサーさんと一緒じゃない。
部屋の様子は全く変わっていなかった。このままずっと、この部屋は高垣さんの部屋として、残り続けるのかもしれない。高垣さんの死の気配を、残したままで。
そんな感傷に浸りながらも、私は迷わず机の引き出しに近づいた。以前、調べなかった場所だ。あの時は、本気で調査をするつもりはなかったし、まだ私にも良心が残っていたから。
全部で3段。1段目をそっと開けた。裁縫セットと、大小様々なボタンが縫い付けられた布が入っている。ところどころ、赤い斑点が散っていて、必死な練習の後がうかがえる。
2段目には、なんとあの香水が入っていた。日にちが経っているせいか、うっすら埃をかぶっている。中身は、半分以下になっている。
34:名無しNIPPER[sage]
2017/04/20(木) 06:14:21.68 ID:KPQUe0GPO
バックをバッグと間違えるようなアホにも配慮してやらないといけないとは投稿者も大変だな
35:名無しNIPPER[sage]
2017/04/20(木) 09:09:54.20 ID:86abSHqlo
こういうSS結構好き
36:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 10:42:16.01 ID:0eIMi64y0
「これは問題だよ…大問題だ」
会議室で、部長は冷たく言い放った。アイドルをやめなきゃいけないかも、と私は脅えた。故人の部屋に無断で侵入し、部屋を荒らし、物を持ち去ろうとした。いや、実際に持ち帰ってしまったものもある。一歩間違えなくても犯罪だ。
犯罪者という発想に、私は恐怖した。けれど、妙なおもしろさも感じた。探偵が犯罪者、というジョークを高垣さんは笑ってくれるだろうか。
私のそばにはプロデューサーさんがいた。私の軽率のせいで管理責任を問われているのだ。彼は、私のミスで相手メディアに謝罪するときと、まったく同じ表情で部長の言葉に耳を傾けていた。私は、プロデューサーさんを疑っていたことを少し忘れて、申し訳なく思った。
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