過去ログ - 白菊ほたるが幸せになることを許せなかったファンの話。
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1:名無しNIPPER[saga]
2017/05/05(金) 09:13:31.95 ID:JsiGlSge0

 初めて彼女のことを知ったのは一〇年前……彼女が一二歳の頃でした。

 色んな新人アイドルが出演していたイベントで、どこか不安げに、端の方に立っていた女の子……それが彼女、白菊ほたるを初めて見た瞬間です。

 彼女に対する第一印象は「辛気臭い。幸が薄そう」などという失礼極まりないものでした。

 しかし、実際、あの頃の彼女はただ見ているだけで気分が落ち込んでくるような女の子ではありました。

 顔はかわいいしパフォーマンスも悪くない。そのはずなのに、どうしてかまったく惹かれない。

 何故か。それは彼女に笑顔がなく、愛嬌がないからでした。彼女より容姿も技術も明らかに劣っているアイドルたちは笑顔と愛嬌をせいいっぱい振りまいているのに、彼女にはそれがなかった。明らかに悪目立ちしていました。


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2:名無しNIPPER[saga]
2017/05/05(金) 09:14:17.40 ID:JsiGlSge0

 観客の中に知り合いがいたので、僕は彼女のことについて尋ねました。彼女のことを知っているか、と。すると彼は彼女について、色んなことを……『噂』のようなものも教えてくれました。

 曰く、彼女は『不幸』だと。実力がないことはないのに、いつもいつも彼女は不幸にさらされる。所属していた事務所が倒産したことは何回あったか。事務所を移籍したことが何回あったか。それだけではなく、日常でも不幸にさらされているらしい。

以下略



3:名無しNIPPER[saga]
2017/05/05(金) 09:14:48.08 ID:JsiGlSge0

 ……その頃でしょうか。僕は自分が彼女に注目していることに気づきました。彼女から目が離せない。イベントなどでも些細な不幸にさらされて、また暗い顔をして……でもアイドルを続けている。そんな彼女から、目が離せなくなっていました。

 いつからか、僕は彼女を応援するようになっていました。自らの不幸に立ち向かい、あきらめず、アイドルとして活動する彼女を応援するようになっていました。

以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2017/05/05(金) 09:15:26.03 ID:JsiGlSge0

 それから時が経ち、彼女は今の事務所に移籍しました。その事務所は所属しているアイドルがどんどん人気になっている途中の、まさしく『波に乗っている』事務所でした。その事務所のアイドルのファンで、彼女を知る者の中には『やめてくれ』と言う者もいました。自分の応援しているアイドルに彼女の『不幸』が伝染しないか、と恐れていたのでしょう。

 僕が思っているのは逆でした。彼女の不幸が伝染するのではなく、あの事務所の『幸福』が彼女に伝染しないか、と。今度こそ、彼女が幸せになってくれることを願いました。

以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2017/05/05(金) 09:15:55.25 ID:JsiGlSge0

 今の事務所に所属してから、彼女は変わりました。少しずつ、少しずつ……変わった環境に合わせて、彼女も変わっていきました。

 先程も言いましたが、不幸がなかったわけではありません。しかし、彼女はその不幸に立ち向かい、その不幸と戦って……時には、その不幸を利用すらしていましたね。そんなことすらもできるようになった彼女は、どんどん幸せになっていきました。

以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2017/05/05(金) 09:16:25.49 ID:JsiGlSge0

 そうして数年が経って……彼女が二〇歳の頃。

 彼女と彼女の担当プロデューサーの結婚が発表されました。

以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2017/05/05(金) 09:16:51.11 ID:JsiGlSge0

 しかし、そんなファンばかりだったわけではありません。過激なファンもいました。僕がどちらだったかは……その時点では、僕は祝福する側の人間でした。こういう時に祝福することが良いファンなのだと思っていたのです。実際、祝福するべきなのでしょう。自分が応援していたアイドルです。幸せになってほしいと願っていたアイドルです。そんな彼女の幸せをよろこばないなんて、それはもうファン失格ではないか。

 ……そう思っていました。そう思うべきだと思っていました。でも、それでも、僕はショックを受けていました。数日間、何も手につかなくて、食事も砂を食べているようにしか感じられませんでした。会社は休み、最低限の生命活動だけをしていました。テレビをつけると彼女の話題でもちきりでした。テレビを消しました。僕の部屋は彼女のポスターやCD、DVD、雑誌、写真集……そんなものでいっぱいでした。それを見ているだけで、胸が強く締め付けられて……でも、捨ててはいけない、と思いました。捨てたくない、と思いました。

以下略



8:名無しNIPPER[saga]
2017/05/05(金) 09:17:26.25 ID:JsiGlSge0

 彼女との握手会がありました。何か危険があるかもしれないということで万全の警備がありました。そんな警備が必要ならやらなければいい、とは彼女は思っていないようでした。これがせめてもの誠意になるならば、と彼女は握手会を行っていました。

 僕はそれに行きました。ファンですから。握手の際、僕は笑顔で彼女と話していました。これからもずっと応援しています。今は色々言われていると思いますが、それでも、僕はあなたを応援します。そんな話をしたと思います。

以下略



9:名無しNIPPER[saga]
2017/05/05(金) 09:18:25.06 ID:JsiGlSge0

 そもそも、結婚するにしても、恋愛するにしても、それをバラさないでほしかった。いつまでも隠していてほしかった。少なくともアイドルを続ける限りは僕を騙していてほしかった。罪悪感を抱えていても、僕に嘘をついていてほしかった。誠意なんていらないから、残酷な現実なんて見せないで、優しい嘘をつき続けていてほしかった。

 幸せに、ならないでいてほしかった。

以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2017/05/05(金) 09:18:51.02 ID:JsiGlSge0

 僕がいちばん最初に彼女のファンになったのは、彼女が自らの不幸に立ち向かう姿を見たからでした。

 僕は思いました。そうだ、なら、彼女をもう一度不幸にすれば、また僕が大好きな彼女が戻ってくるはずだ、と。そこからまた幸せになるために努力する彼女の姿を見ることができたなら、僕はまた、彼女のファンになれる。僕の人生が取り戻せる。そう思いました。

以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2017/05/05(金) 09:19:26.65 ID:JsiGlSge0

 ……白菊ほたるさん。あなたは今、不幸ですか?

 最愛の夫を、最も信頼していたプロデューサーを失ったのです。きっと、不幸なことでしょう。

以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2017/05/05(金) 09:19:53.32 ID:JsiGlSge0

 白菊ほたるさん。僕も彼と同じ気持ちです。

 どうか、自殺なんてせず、あきらめず、絶望せず、こんな不幸に負けることなく、生きて下さい。

以下略



13:名無しNIPPER[saga]
2017/05/05(金) 09:20:24.53 ID:JsiGlSge0



14:名無しNIPPER[sage]
2017/05/05(金) 09:48:21.02 ID:ocy3gOVso
おつ


15:名無しNIPPER[sage]
2017/05/05(金) 10:37:50.84 ID:oVzaxr7oo
Pをコロコロするって事務所潰すより難易度高そうだがな…


16:名無しNIPPER[sage]
2017/05/05(金) 15:20:07.39 ID:31VoIsNLO
ナイフで刺せばお終いやろ会社潰すなんて相当の財力や権力がなきゃ一個人では成し遂げられないしな


17:名無しNIPPER[sage]
2017/05/05(金) 19:45:55.10 ID:SpOrnvDA0


結婚あるいは交際を発表した結果
Pが自分のファンに殺されても
なおアイドル続けられそうな子って思い描き難いかな…


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