898:名無しNIPPER[saga]
2017/12/28(木) 15:35:44.27 ID:xOgRNUoX0
俺はなぜかいたたまれない気持ちになって「すみません」と謝った。
彼女は慌てて「だいじょぶだいじょぶ」と繰り返した。
「……何か弾いてみる?」
899:名無しNIPPER[saga]
2017/12/28(木) 15:36:28.44 ID:xOgRNUoX0
【光と影、その先にあるもの】
七、八曲歌い終えた後の胡依先輩は、ぜえはあと肩で息をしていた。
選曲はなぜか曲名縛りらしく、くるりから絢香、果ては尾崎まで多種多様なジャンルから歌っていた。
900:名無しNIPPER[saga]
2017/12/28(木) 15:37:45.94 ID:xOgRNUoX0
「シノちゃんと私ね、音楽の趣味とか多分めっちゃ合うの」
「へえ」
901:名無しNIPPER[saga]
2017/12/28(木) 15:38:34.21 ID:xOgRNUoX0
「いや、あれはそれだけじゃないでしょ」
だから、思わず敬語も忘れて返すと、
902:名無しNIPPER[saga]
2017/12/28(木) 15:39:46.13 ID:xOgRNUoX0
そこで、先輩は言葉を区切った。
数秒に渡って沈黙が流れる。俺が何かを言うべきだという気がした。
「……萩花先輩が、胡依先輩のことを知ろうとしたんですか?」
903:名無しNIPPER[saga]
2017/12/28(木) 15:40:35.78 ID:xOgRNUoX0
「だから私は、あの子のことを一方的に避けたの。
あとで深く傷付くなら……早いうちに、浅いうちに切ってしまいたかったから。
私のせいで傷付かせるようなことがあったら、きっと耐えきれなくなるから」
904:名無しNIPPER[saga]
2017/12/28(木) 15:41:50.58 ID:xOgRNUoX0
俺が彼女に無くしてほしくなかったのは、何の混じり気のない純粋な部分だった。
うまく先回りして、道に転がっているものはどんなに小さな小石だったとしても取り除いて、
それでも残ってしまった障害物でできた傷については、後からどうにかして修復するようにして。
905:名無しNIPPER[saga]
2017/12/28(木) 15:42:58.38 ID:xOgRNUoX0
──ならば、と考える。
もしかすると、周りの友人や大人からの「すごいね」「がんばってるね」などという言葉は、彼女には何か別の意味を孕んだものとして耳に入ってしまっていたのではないか。
906:名無しNIPPER[saga]
2017/12/28(木) 15:43:45.52 ID:xOgRNUoX0
「あの、白石くん」
不意に耳元で名前を呟かれて、はっと我に帰る。数秒経ってその近さに驚いて、慌てて片手を手すりから離して距離を取ると、胡依先輩は心配そうにこちらを見つめていた。
907:名無しNIPPER[saga]
2017/12/28(木) 15:44:42.42 ID:xOgRNUoX0
違っていたら、とは思わなかった。
彼女が、俺の言葉を聞き終わらないうちに、口をぽかんと開けて、それから忌々しげに微笑んだから。
「白石くんは、超能力者か魔法使いなの?」
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