鷺沢文香「アッシェンプッテルの日記帳」
1- 20
13: ◆ao.kz0hS/Q[sage saga]
2017/10/08(日) 00:06:21.22 ID:1nHzinqN0

額の鈍痛に気付くと同時に血の気が引きました。
確実に気付かれました。
その証拠にドアの向こうでは、短い悲鳴と慌ただしく着衣を正すような音がしました。
私もぼんやりとしていられません。
一刻も早く立ち去らなければ!
そう思って立ち上がろうとしたのですが…、あろうことか盛大に尻餅をついてしまいました。
半脱ぎのストッキングとショーツのことを完全に失念していて、脚を取られてしまったのです。
尾骶骨に走る痛み。しかし、そんなものにかかずらっているいる余裕はありませんでした。
なぜならば尻餅と同時にドアが開き、Pさんが顔だけを出した状態でこちらを見ていたのですから。

“文香…?”

ひぃ! と声にならない悲鳴を上げてしまいました。
私は全てが終わってしまったと思いました。
何故か、あの夜以来の私の背徳行為の総てが露見してしまったとさえ感じていました。

恐怖に駆られ腰を抜かした私は、四つん這いになって逃げ出しました。
廊下の角を曲がりPさんの視界の外に出たと分かると立てるようになり、ストッキングとショーツを直して非常階段へ駆け込みました。
私を呼び止めようとするPさんの声があったような気もしますが、私は無視しました。
そして何度が階段を踏み外しそうになりながら一階まで降り、そのままの勢いで自宅まで逃げ帰ったのです。

自室の玄関のドアを施錠し、チェーンロックまで掛け、それでようやく体の力を抜くことが出来ました。
ベッドに倒れ込み、スマートフォンを取り出すと案の定、Pさんからメッセージが届いていました。

『とんでもないところを見せてしまって申し訳ない
 きっと軽蔑しているだろう
 さっきのことについて一度話をさせて欲しい』

文面は私を咎める旨のものではありませんでした。
よく考えるまでもなく当然でした。
フロアは暗く、私の決定的な部分は長いスカートで隠れていたのですから。
彼らにとって私は完全に被害者なのです。
夜たまたま事務所に来てみれば、担当プロデューサーと同僚アイドルの情事を見せつけられ、腰を抜かした不運な鷺沢文香。そう考えたのでしょう。

それにしても一体どんな話をするつもりなのでしょうか?
謝罪でしょうか?
美波さんと真剣にお付き合いしているということでしょうか?
それとも口止めがしたい?

少なくともどれも私には必要ありません。
下衆な勘繰りであの場所に行ったのは私ですし、二人が真剣にお互いを愛し合っているというのは私が一番よく知っています。
それに二人の素敵な関係を口外するなんて、口が裂けてもするつもりはないのですから。
私はただこれまで通り、二人の蜜月の御相伴に与りたいだけ。
できることならば、近くで。
もっと、もっと近くで。

『明日の夜、Pさんのお宅で美波さんも交えて、お話がしたいです』

送ってしまってから、頭を抱えるほどに後悔しました。
胸に湧いた欲望は最悪という他ありません。
なのに、後悔も自己嫌悪もどうでもよくなるくらいの昏い欲望がすでにフツフツと込み上げていたのです。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
36Res/60.06 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice