2:名無しNIPPER[saga]
2018/12/02(日) 11:46:27.61 ID:bVAioiv60
「どういうことだ、これ」
五つ子の家庭教師を始めてから、もうずいぶんと日が経った。途中、学年の切り替わりを挟む程度には。
着任当初には非協力的だった面々が素直に教えを乞うてくれるようになったのは、純粋に嬉しく思う。そこにやり甲斐じみたなにかを感じ取れるようにもなった。
二年の期末テストで無事全員が赤点回避を成し遂げ、俺のバイト先で祝賀会を開いたのが三月のこと。
3:名無しNIPPER[saga]
2018/12/02(日) 11:48:27.58 ID:bVAioiv60
元々暮らしていた高級マンションを放り捨て、彼女たちが新生活の拠点としたアパート。今日はここで、付きっ切りで中間試験の対策をする予定を組んでいたのにも関わらず、部屋にいつもの活気はない。
まあ、それも当然。
「みんなから遅れるって連絡をもらったわ。そのうち来ると思うから、しばらく待っててちょうだい」
4:名無しNIPPER[saga]
2018/12/02(日) 11:49:12.62 ID:bVAioiv60
「そういうのは俺に直接連絡するもんだろ」
「結果的に伝わったんだから同じじゃない。大丈夫よ。みんな、やる気を無くしたわけじゃないから」
「それにしたって意識が低い。先が思いやられるぞ」
なにせ、全力で詰め込んでようやく赤点ラインを超えられるかどうかを争う連中なのだ、こいつらは。気を抜いていると、瞬く間に知能が元どおりになってしまいそうで恐ろしい。常に余裕がない状態だということを、今一度理解してもらう必要がある。
5:名無しNIPPER[saga]
2018/12/02(日) 11:50:29.35 ID:bVAioiv60
「取り敢えず、座って休んでなさいよ」
二乃に示された場所に腰を下ろす。ちゃんと刻限に間に合っているこいつを叱ったところで、得られるものはない。
……それにしても。
6:名無しNIPPER[saga]
2018/12/02(日) 11:51:22.12 ID:bVAioiv60
「そうだ、せっかくあんたがいるんだから、私だけでも苦手なところを教わっておこうかしら」
「構わんが」
意欲的に勉強してくれるのは助かる。モチベーション管理に関しては、正直俺じゃ完全に掌握できない。机の前に座らせる前段階をショートカット出来るなら、それはありがたいことだ。
一番反抗的だった二乃をどうにか手懐けられたのが、この数ヶ月一番の功績だろうか。次いで全員の赤点回避。流石に逆か、これは。
7:名無しNIPPER[saga]
2018/12/02(日) 11:52:05.26 ID:bVAioiv60
「数学か」
「そ。点数的にも一番苦手だし」
バツの付いた図形と方程式の問題。以前の授業で解いたものを二乃なりに復習しようと試みた形跡はあったが、それでも結局、答えにはたどり着けていない。
8:名無しNIPPER[saga]
2018/12/02(日) 11:55:02.10 ID:bVAioiv60
「じゃあ今のうちに紅茶淹れるわね。砂糖は欲しい?」
「頼む」
「そう、助かるわ」
助かる……? と一瞬クエスチョンが浮かんだが、言い間違いかなにかだろう。もしかしたら、糖分が脳の活動補助に役立つとか、そういう話かもしれない。
9:名無しNIPPER[saga]
2018/12/02(日) 11:56:19.48 ID:bVAioiv60
「俺の分だけで良いのか?」
「……ああ、私はもう少し冷ましてから飲むわ」
「そうか?」
二乃の分のカップが出されていなかったので不審に思う。まあ、ブルジョワな暮らしを送っていた奴だから、こだわりでもあるのだろうと考えることにした。
10:名無しNIPPER[saga]
2018/12/02(日) 12:34:38.03 ID:bVAioiv60
「…………ん」
目を開く。あれからどれだけ時間が経ったかは判然としないが、まだ体には強い倦怠感が残っている。前と同じ薬なのだとしたらこんな症状は初めてだから、もしかするとそこまで長く眠っていたわけではないのかもしれない。
「あ、起きた? やっぱり三回目にもなるとちょっと抗体出来るのね」
11:名無しNIPPER[saga]
2018/12/02(日) 12:36:20.67 ID:bVAioiv60
「ていうか待て。それ以上こっちに寄るな」
「どうして?」
「どうしてもだ!」
「良いじゃない。私の裸見るのなんて慣れたものでしょ?」
12:名無しNIPPER[saga]
2018/12/02(日) 12:37:00.49 ID:bVAioiv60
「それとも、照れてる?」
「なんで俺が照れなきゃならないんだよ」
「そう、なら良かった」
「……おい!」
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