中野一花「うらはらちぇいす」
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56:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:26:26.84 ID:3bKI/3gF0
「…………これで十分だろ、共有する秘密。キス下手くそって。黙っておくから、そっちも頼む」
「うん……」

 重っ苦しい空気感から脱しようと努めて、手持無沙汰な右手で未だくすぐったさが抜けない耳を掻く。次いで立ち上がってかけっぱなしになっている一花の上着を取り、乱雑な手つきで彼女に羽織らせた。
 
以下略 AAS



57:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:26:57.15 ID:3bKI/3gF0
 しかし一花は三角座りのままどんどん小さくなっていくばかりで、一向に行動に移らなかった。なんというかもう、見ていて痛々しいばかり。
 俺の感性ではよく分からないが、世間一般的にキスの技能は必須だったりするのだろうか。ここまで凹むってことは、実際そうでもないと説明がつかないし。二乃も三玖も、まあ取り立てて下手だったわけでもないし。
 でも……なあ?

「そんなに落ち込むことか?」
以下略 AAS



58:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:27:33.31 ID:3bKI/3gF0
 そう言われようにも、歯が当たってしまった事実は消えてくれないし、ここはどうにか切り替えてやっていくしか選択肢がないと思うのだが、気持ち的にそう簡単には割り切れなかったりするのだろうか。理想と現実との乖離が思った以上に大きくて、そのギャップに打ちひしがれているとか。
 でも、それは彼女個人の問題だから、外野の俺がどうこうしてやれることじゃないし……。そもそもまた女の子から強襲されて、いよいよ誰を信じればいいんだよ状態に陥ってるし……。

「ねえ、フータロー君」
「なんだ」
以下略 AAS



59:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:28:02.00 ID:3bKI/3gF0
 あいつはもう、キスがどうとかいったレベルではなかった。異常な暴走っぷりだったし。……かなり気持ちよかったのは認めるけど。
 だからといって、それを馬鹿正直に教えて誰が得をするのか。俺は言い損だし、一花は傷心が加速するだけでは……?
 なら、ここは優しい嘘で誤魔化すのが一番正しい選択なのではないかとさえ思う。拗らせるのは勘弁願いたい。

「似たようなもんだったよ」
以下略 AAS



60:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:31:29.08 ID:3bKI/3gF0
 更に一花が小さくなった。自信とか尊厳とか、人が生き抜いていくうえで大切なものが根こそぎ破綻していっている感じだ。さっきまでとは別の意味で見ていられない。

「恥ずかし……」
「キスの巧拙とか人生においてそこまで重要じゃないだろ」
「でも、今後フータロー君はさ、私がみんなに対してお姉さんっぽい言動をするたび、『でもこいつはキス下手なんだな』って思うじゃない」
以下略 AAS



61:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:32:02.54 ID:3bKI/3gF0
 俺の評価なんかで何が変わるとも思えないが、一花的に俺に舐められっぱなしなのは癇に障るらしい。まったくもって謎な価値観だが、この落ち込みようを見ると、彼女にとってはものすごく大事なことなのだろう。

「三玖と私が話してるところを見たフータロー君は、これから絶対考えるようになるんだよ?『あ、上手い奴と下手な奴だ』って」
「お前の中で俺がどんな認識を受けてるのか分からなくなってきた」

以下略 AAS



62:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:32:30.74 ID:3bKI/3gF0
「……フータロー君はさ、きっと上手なんだよね」
「え、そこに飛び火すんの?」
「三玖と上手なキスしたんでしょ? なら、私よりは絶対に上じゃない」
「……確かに歯は当たらないかもしれんが」
「ほら、そうやっていじめる。キスマウント取ってくる」
以下略 AAS



63:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:33:43.75 ID:3bKI/3gF0
「……ねえ、フータロー君」
「なんだよ」
「一つお願い聞いて」
「それで解決するならこの際聞いてやるよ……」
「…………やり直し」
以下略 AAS



64:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:34:12.65 ID:3bKI/3gF0
 なんだか上手く流されてしまった気がするが、あんな面倒な状態の一花をこの先慰める手間を思えば、ちょっとちゅっとやって納得してもらった方が早いと自己完結してしまった。生憎というか幸運というか、同じ体のつくりをした連中で事前練習はばっちりなので、俺が上手いことリードしてやればすぐ終わる。俺もこんなことを考える人間になってしまったんだなぁと変わり果てた自分の姿に悲しくなるが、背に腹は代えられまい。
 一花と目線を合わせるべくソファに両膝をついて、はーっと大きく息を吐く、大義のために短期的な犠牲は止むを得ないのだと必死に自分を説得しながら。


65:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:35:02.93 ID:3bKI/3gF0
「……とりあえず目を瞑れ」
「……ん」
「……高さの都合的に、ちょっと上向いて」
「……ん」
「……あとはもうちょい力抜け。またぶつかるぞ」
以下略 AAS



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