142:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:42:08.70 ID:OU1b3DXA0
「でも、そうじゃなくてもいいのかもしれない」
「え?」
「透子の家族と俺の家族が、一緒に母さんのピアノを聴くって、そんなこと思いもしなかったけど、それだけでも十分なんじゃないかって」
143:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:44:08.82 ID:OU1b3DXA0
そうして俺が覚悟を決められずにいると、突然、透子が何かに気づいて声を上げた。
「あっ……」
振り返ると、透子が食い入るように蜻蛉玉を覗き込んでいた。俺もそちらに目を凝らして、はっ、と息を飲む。
144:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:46:23.26 ID:OU1b3DXA0
*
ガラス越しに見えた花火は、しばらくして打ち止めとなった。
それからは特に何も起こらず、俺たちは諦めて家に戻ることにした。
145:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:51:37.99 ID:OU1b3DXA0
「……母さんが、演奏旅行について一緒に世界を回らないかって、誘ってくれてる」
そう告げると、透子は目に見えて動揺した。
「駆くん……なに言ってるの? 駆くんがもうすぐここからいなくなるかもしれないってこと?」
146:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:55:36.29 ID:OU1b3DXA0
「……私たち昨日、ずっと一緒にいたのに……」
目に涙を溜めて、透子が悔しそうに訴える。
「っ……」
147:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 12:02:53.61 ID:OU1b3DXA0
*
「……ただいま」
俺たちが家に帰りついたとき、演奏の準備は既に整っていた。母さんはピアノの前に、透子の家族はその後ろに並んで、座っている。
148:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 12:15:17.42 ID:OU1b3DXA0
†
あの夏祭りから数年が経ち、俺もそれなりに分別がついてきて、ようやく理解した。
街から街へと飛び回る俺には、同じ場所で、同じ顔ぶれと、長い時の中で思い出を共有することができない。
149:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 12:20:30.60 ID:OU1b3DXA0
<第12話 花火(再び)>
母さんの演奏が終わりに近づいたときだった。
繋いでいた透子の手に、急に力がこもる。
150:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 12:56:44.25 ID:OU1b3DXA0
†
『一緒に花火を見に行こう』
そう約束をして、しかし待ち合わせの時刻に遅れてしまい、置いていかれた俺は、諦めきれずにみんなを探した。
151:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 12:58:33.29 ID:OU1b3DXA0
――だが、現実はそうではなかった。
『どうしたんだ?』
『……なんでもない』
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