6:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 20:35:08.72 ID:DvK9a+dU0
「ありがとうございます」
先生が校舎へ戻っていくのを見届けてから、俺はスケッチを続ける彼女の隣に、ゆっくりと腰掛けた。
「面倒だよね。転校って」
7:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 20:44:27.48 ID:DvK9a+dU0
『他から来た子』――その単語が、胸の奥に無断で手を突っ込まれたように、嫌に耳についた。
「……だから一羽だけ浮いてるのか」
少し暗い調子でそう呟いた俺に、トウコが不思議そうに振り返る。だが、俺が何も言わないでいると、彼女はまたデッサンに戻った。
8:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 20:51:08.02 ID:DvK9a+dU0
「ここは港町だし、猫もたくさんいる。――襲われる可能性は考えない?」
「魚でお腹いっぱいだから大丈夫っ! ……たぶん。今まで猫に襲われたっていう話、聞いてないし……」
「猫以外は?」
9:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 20:57:42.87 ID:DvK9a+dU0
*
あんなことをしでかして、結局、俺は彼女に《未来の欠片》のことを切り出せずに終わった。
けれど、もちろん、一歩目で躓いたくらいで諦めるつもりはない。
10:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 21:01:17.60 ID:DvK9a+dU0
「紹介します。ええっと、名前は――」
「沖倉です」
「沖倉ダビデ?」
11:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 21:13:31.09 ID:DvK9a+dU0
唐突な当たり前のグラスリップSSです。
12:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 23:10:29.16 ID:DvK9a+dU0
†
その《声》のことは、母さんにも、もちろん父さんにも、話したことはない。
あれは、忘れもしない、あの夏祭りの日。
13:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 23:16:14.15 ID:DvK9a+dU0
<第2話 ベンチ>
「俺はあの日、君と同じものを見た」
そう告げた俺に、透子は何も答えることはなかった。
14:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 23:26:55.15 ID:DvK9a+dU0
*
そして、翌日。
父さんの家のリビングのリクライニングソファの上で、俺は母さんの演奏する夜想曲を聴いていた。
15:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 23:37:18.67 ID:DvK9a+dU0
『何はともあれ、今日の約束に深水透子がどう応じるかだ』
『彼女の協力は必要不可欠なんだから、うまくやれよ』
わかってる……やれるだけのことはやるさ。
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