【グラスリップ】透子「かけるくん?」
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34:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/07(日) 11:20:54.06 ID:4h98r15f0
 †

 自分の名前について調べてみることは、誰でも一度は経験があるだろう。

 俺――沖倉駆も、例に漏れず漢字辞典を開いた口だった。

 『馬』に、『区』。

 意味は、走ること。特に、馬に乗って。

 そこから、馬を追い立てるとか、鞭を打って走らせるとか、強要や排斥といった意味も派生する。

 正直、プラスよりもマイナスのニュアンスが強いように思った。

 同じ『カケル』ならば、『翔』のほうがずっと印象も良くなるのに、とも。

 けれど、学校で『駆』の字を習う頃には、考えが変わっていた。

 俺にぴったりなのは、『翔』ではなく、『駆』なのだと。

 俺は母さんのように大空を翔ぶことはできない。

 置いていかれないように、追い立てられるように地を走るだけで、精一杯。

 そうして必死に駆けていくうちに、何かを取り零し、掴み損ね、欠けていく。

 母さんも父さんも、俺がこうなるとわかって『駆』と名付けたのだろうか?

 いや、そんなわけはない――頭ではわかっているけれど、時々、自信がなくなる。

 自由に飛翔する母さんの姿を間近で見ていると、尚更に。

 俺は『駆ける』ことしかできない、『馬』では空は飛べないのだ、と。

 ため息をついて、ふと、ある思いつきが頭に浮かんだ。

 もし『馬』ではなかったとしたら、俺はどうなっていただろう。

 もしも、俺が『鳥』だったら――?

 ぱらぱらと漢字辞典をめくり、俺はその一字を見つけ出す。

 『鳥』に、『区』。

 ノートの余白に書きつけて、横に『沖倉』と添えてみる。

 ひどく間が抜けているような、ある意味では似合いのその名に、俺は苦笑するしかなかった。


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