52:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/07(日) 13:02:17.07 ID:4h98r15f0
*
透子に電話を掛けてから、一時間ほどして。
俺と透子は、俺の部屋という名のテントが張られた庭でコーヒーを飲みつつ、父さんの料理が出来上がるのを待っていた。
「……あの」
話を切り出したのは、透子が先だった。電話で父さんに話したことかと思ったが、どうも違うらしかった。
「こないだ、ほら、にわか雨の日、麒麟館の坂道で……」
躊躇いがちに言って、俯く透子。
彼女がなんの話をしたいのかはすぐにわかった。
まさか本当に目撃されていたとは。しかも案の定、あらぬ誤解をされているらしい。
「……見てたのか。でも俺は高山を抱きしめてたんじゃない。支えてたんだ」
努めて淡々と、言い訳がましくならないように注意しながら――途中、透子が何か呟いたような気もしたが――俺は続けた。
「彼女、足を痛めてて。知ってるだろ? で、坂道でこけそうになって――」
ちらりと透子の反応を伺う。ものすごい形相でこちらを睨んでいた。
……誤解は解けたのだろうか? 定かではない。が――、
「ま、大したことじゃない」
この話はここで終わらせるのが最善だというのは、いくら俺でも理解できた。
それに、大したことじゃない、というのは実際その通り。
ちょうど高山の話が出たことだし、大したことがある用件のほうを話すとしよう。
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