54:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/07(日) 13:09:30.03 ID:4h98r15f0
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ひょっとすると、俺は気恥ずかしかったのかもしれない――というのは、後から気づいたことだ。
高山からの伝言を透子に伝えると、途端に俺の口は、チェーンの外れた自転車のように回らなくなった。
食事の席について、父さんがいたから話しにくいというのもあったのかもしれないが……。
本来、高山の伝言は口実に過ぎず、俺自身が透子に伝えたいことがあったはずなのに。
思いがけず聞こえてくる透子の《声》について話したかった。
あの夜から今まで、透子が何を考えて過ごしてきたのか訊きたかった。
《未来の欠片》のことを深く知るために、また透子に力を貸してほしかった。
あるいは、もっとプライベートなことも――井美雪哉の告白にどんな返事をしたとか――知りたかった。
結局、透子との会食は、父さんが話すのに相槌を打っているうちに終わった。
料理に満足している透子の顔が見られたのは嬉しかったが、これではただの伝言係だ。
何か言わなければ。
他の誰かではなく、俺自身のことを、伝えなければ。
このまま付かず離れずの距離でいたって、何も変わらない。
踏み出して、踏み込んでみようと、決めたはずだろう――。
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