73:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/09(火) 13:20:48.78 ID:W+HAaMa50
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俺はグラウンド横の階段に腰掛けて、哲学者の名前を与えられた鶏たちが思い思いに歩き回るのを茫然と眺めていた。
「……やなちゃんの言ったこと、本当?」
隣に座る透子が探るように訊いてくる。俺は取り繕う気力もなく、白状する。
「ああ……走る気なんてなかった。そんなことして俺が勝てるわけない」
「……じゃあ、どうして……?」
「殴り合いに持ち込んで……どうしたかったのかな――俺、よくわからない……」
――いいや、本当は、心の底ではちゃんとわかってる。
ああして切迫した状況になれば、透子が俺をどれくらい気にかけているのか、確かめられると思った。
窮地に陥る俺を見て、透子がどんな行動を取るのか、試したかった。
透子なら、きっと俺を庇って――守ってくれるんじゃないかと、期待して。
あの花火大会の翌日、この校庭で初めて透子と言葉を交わしたとき。
透子は、俺という理不尽な脅威に晒された鶏を、全力で守ろうとした。
『それならジョナサンは、私が守るからっ!』
あんな風に、俺も透子に言ってほしかった。
そうすれば、まるで不透明な彼女の本心がわかるんじゃないかと。
直接訊けばいいものを、そんな度胸もなくて。
嫉妬に駆られ、井美雪哉や高山まで巻き込んで、自棄を起こした。
本当に、高山の言う通り――俺は最低だ。
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