84:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 21:14:47.81 ID:W+HAaMa50
「…………」
俺があんまり見つめるからか、透子はまた俯いてしまった。
何か掛けるべき言葉を探したが、見つからない。
そうして微妙な沈黙が続く中、不意に上空を鳶が過ぎ去り、足元にその影が落ちて――。
「っ――――危ない!!」
いきなりそう叫んだかと思うと、透子は血相を変えて俺を壁際へと追い立てた。
何が起きたのかわからなかったが、次の透子の一言で事態が飲み込める。
「今、駆くんが落ちるのが見えた!!」
《未来の欠片》――俺には何も『聞こえなかった』。でも、透子には『見えた』のだ。
「こうしていれば、大丈夫だよね……っ!?」
狼狽と困惑で強張った透子の顔が間近に迫る。
透子がどんな《未来の欠片》を『見た』のかはわからない。だが、経験上言えることは――、
「……未来は、変えられない」
少なくとも、俺の聞いてきた《声》はそうだった。
「やっぱり海にする! そのほうが安全っ! 明日は海――絶対ね!?」
確かに、海ならば、わざわざ崖の上にでも登らない限り、落ちることはないだろう。
透子の見た映像が具体的にわかれば気をつけることもできるが……この取り乱し様では、今すぐ聞き出すのは難しいか。
一体、『落ちる』というのは、どこから?
この展望台か? 学校の校舎? 例の高台? 神社の急な階段?
あるいは……と、俺は妙な連想をした。
軒下で透子と身を寄せ合っているからだろうか。
脳裏に、先ほどの二羽の雛がいたツバメの巣が思い浮かんだ。
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