11: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 02:34:53.53 ID:zJUkddjZ0
楽しいから生きたい。楽しめなくなる死が怖い。
多くの罪を犯し、断罪の刃が目の前に迫ってなおそう思えるほど、奴の人生は楽しいものだった。
これでやっと終われるなど、微塵も考えなかったんだろう。
それのなんと羨ましいことか。
そしてそれを、多くの人が当たり前のように享受している。
俺にはそれが無い。そもそも、あるのだろうか。俺に生きる――
「……奴は所属するコミュニティを失った。利き手も失った。これから先は地獄だ」
考えてはならない方に思考が向かいかけた。
見れば女は、得体の知れない気持ちの悪いモノを見る目をしている。
こんな話をしても理解などされない。考えてはならないことを考えてしまうだけだ。強引にでも話を変えよう。
「ここから人里まで、歩いて半日はかかる。途中で倒れるかもしれないし、血の臭いで獣が集まり生きたまま食われるかもしれない。なんとか人里に着けても、顔つきと片手が無いことからカタギの人間で無いことがバレバレだ。そんなよそ者が職に就けるはずがない。襲って金目の物を得ようにも片手ではな。乞食になって、不衛生な環境と栄養不足で傷が悪化して死ぬというのが一番ありえる線か」
「だとしても……」
「そんなに奴の死を望むのなら――」
言い訳ではなく率直に、奴にこれから起こり得ることを話す。
奴の待ち受ける未来を聞いて女は幾分か溜飲は下がりはしたが、それでもまだ怒りがありありと見て取れる。
だから腰に隠していた短刀の先を握り、そっと柄の方を女に差し出した。
「――オマエが殺してきたらどうだ」
「……ッ!?」
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