14: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 02:36:51.80 ID:zJUkddjZ0
盗賊団の生き残りではない。茂みへの距離は約十メートル。こんな近くに接近されるまで気づかせない隠形の業を、奴ら程度ができるはずがない。
血の匂いに惹きつけられた狂人か、俺の首を狙う賞金稼ぎか。考えにくいが、“魔に心を呑まれたモノ”の可能性すらある。いずれにしても只者ではない。
とはいえ、これ以上のことは対峙しなければわからなかった。
姿の見えない相手に向けて、やや早足で近づく。
反応は無い。距離が縮まっても茂み越しに攻撃するわけではない。なら茂みをかき分けた瞬間を狙うつもりか。
無造作に木の枝を掴み、横に追い払うと――
「……これは?」
「ど、どうしたの?」
不思議に思い目の前を睨んでいたが、妹の不安げな問いに振り返る。
「何でもない。ただの気のせいだった」
「……本当に?」
俺の様子から何か察したのか、妹は疑わしい声をあげる。
「本当だとも」
そう、本当なのだ。
俺は確かに只者ではない気配が、いつの間にか接近していることに気づけた。
そしてそいつがいたはずの所には、姿はおろか痕跡すら残っていなかった。
気のせいだったと言わざるを得ない。
――気のせいだったことなんて、これまでの人生で一度も無いのに。
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