何も無いロレンシア
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15: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 02:37:25.81 ID:zJUkddjZ0
※ ※ ※





 あれから目付け役も追いつき、何事も無く――妹の俺に向ける敵意から、目付け役たちが俺にあらぬ疑いをかけはしたが――街まで戻ることができた。

 城主伯の遣いである執事が大喜びで出迎えてくれた。

 それはそうだ。この街は『安全』という信用で成り立っている。盗賊団に襲撃されたのは痛いが、わずか二日後に盗賊団を壊滅に追いやり、さらわれた街の者も生きたまま取り返すことができた。その信用は首の皮一枚つながったと言える。

 もっとも、大喜びなのは俺が持ち帰った戦果に対してのことで、俺自身に対しては慇懃ではあるものの、侮蔑や嫌悪を必死になって隠そうと躍起になっているのが見て取れた。

 感謝はしている。歓迎もしたい。だがオマエには無理だ。報酬は払うから、一刻も早くこの街を去れ。

 とまあ、こんなところだろう。

 俺が今日一日は体を休め、明日の早朝に街を発つ予定を告げると、ここで初めて心から嬉しそうな表情になったものだった。

 本当はすぐに旅立ってやりたがったが、行きは文字通り不眠不休の強行軍を行い、帰りはあの姿が確認できなかった気配を警戒しながらの護衛となってしまった。

 別に疲れを感じはしないが、せめて一日は休むべきかと考えてのことだ。

 部屋を用意するという執事の必死に絞り出した礼儀を丁重に断り、街の安宿で、渋る女将に相場の三倍の値段を払って泊まった。

 そして翌朝。

 まだ日が昇りきっていない頃に宿を出ると、そこにはさらわれた妹が待っていた。

「意外だな」

「……お世話になった方が街を出るのです。見送るのは当然では」

「まだ心身ともに傷ついているんじゃないか? 誰かに伝言を頼んでも良さそうだが」

 チラリと妹の後ろに目を向ける。恐らくは彼女の親類だろう三人の男が、俺を睨んでいる。

 まだ暗い時間に女一人を出歩かせるわけにはいかないというより、完全に俺を警戒して着いてきたようだ。

 などと考えていると、彼女は男たちの方を振り返った。

「着いてきてくれてありがとうございます。すみませんが、二人で話させてもらいますか」

「しかし……」

「お願いします」

「……わかった。何かあったらすぐに呼ぶんだよ」

 男たちは俺を一睨みしてから距離を取る。

 しかし会話が聞こえない程度に離れても、妹は黙ったままだ。

 手を強く握り締め、意を決して口を開きかけたかと思えば閉じる。それを何回か繰り返した頃、思ったままを口にした。

「義理堅いな」

「……嫌味ですか?」

「まさか」


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