20: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 02:40:39.15 ID:zJUkddjZ0
――もしかするとすると魔法か?
魔に心を呑まれたモノだけが起こせる超常の力。それが魔法。
魔法を扱える者と会ったことはこれまで三度しかない。それほど魔に心を呑まれたモノはマレで、さらに生き延びられる者は限られるからだ。
というのも、魔に心を呑まれた時点で例外無く異端であり、その瞬間全ての人間の敵となる。魔に心を呑まれたモノが同じ村の住民で、親戚であっても容赦などしない。
魔に心を呑まれたモノはもはや人間ではないという教えがどこにでもあり、実際下手に情けをかけて見逃そうものなら、何百何千という犠牲者が出ることになる。
力はあるが極めて不安定な初期の状態では、何十という人間から一斉に投げられる石やタイマツは大きな脅威だ。たいていの場合はここで死ぬ。なんとか最初の修羅場を潜り抜けても、次は“中央教会”を筆頭とした宗教勢力から、次々と討伐部隊が送られてくることとなる。
果たしてこの世界に魔法を扱えるモノは何人いるのだろうか。大融落(グレイブフォール)の頃は何百何千といたらしいが、今となっては十人足らずかもしれないし、百を超えることはまずないだろう。
「魔法のような、穢らわしいモノではありませんよ」
「……そうみたいだな」
考えが顔に出たのか、シモンは俺の無知を嘲笑いながら否定した。おそらく嘘はついていない。
俺は魔法を三度見る機会があった。これはベテランの聖騎士と同じかそれ以上の経験だろう。
魔法の共通点は、おぞましさと唯一無二であること。
魔法とは、内面の心が外界に干渉して起こす超常の力。それには異常なまでに歪んだ心、すなわち魔に呑まれた心が必要となる。そして人の心の歪み様は千差万別であり、そこから引き起こされる力はおぞましく、そして唯一無二なものとなる。
コイツに接近されたのはこれで二回目だが、どちらも皮膚の下を虫が這いまわるような感触は起きなかった。魔法ではない。
では何なのか? 気にはなったが素直に答えてもらえるはずもないので、取りあえず置いておくとしよう。
「それで、俺に一体何の用だ」
“何も無い”俺に積極的に関わろうする者の理由なんて、二つしかない。俺の首に用件があるか、もしくは――
「依頼ですよ。悪名高い“何も無い”ロレンシアに、ぜひ引き受けていただきたい仕事があるのです。その話をしようにも、貴方は仕事の最中であったため、終わるのを待っていたのです」
「……最初に言っておくが、俺は――」
「ええ、存じておりますよ。貴方は金銭に興味が無く、引き受ける仕事の条件は強く興味が惹かれるか、あるいは――クク、フハハハハハ」」
シモンはここで堪え切れずに、いや堪え切れなかったフリをして、最初は小さく、だがついには身を折って笑い始めた。
「ヒヒ、人助け! そう、今回のような人助けでなければ引き受けてはくれないのでしたね!」
「様子を見るに、人助けではなさそうだな」
「いえいえ! 引き受けてくだされば、私がたいへん助かりますので!!」
「興味もわきそうにないな」
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