何も無いロレンシア
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29: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 02:47:19.56 ID:zJUkddjZ0
 どうしたものかと考えていると、言いたいことだけ言ってシャルケは限界だった意識をわざと手放した。活を入れて意識を戻しても堂々巡りになるだけで、時間の無駄だ。

「……オマエ、標的がどこにいるかわかるか?」

「それは、私と手を組む腹積もりということか」

 “何も無い”俺と手を組むことに嫌悪感を覚えたのだろう。イヴは形の良い眉をあからさまに歪めた。どうもこの女、自分の意志を表明するにあたって声の抑揚の無さをカバーするためか、言葉がきつかったりボディランゲージが大きいようだ。暗殺者とは思えない以外な癖だが、存外暗殺者なんぞやってるとらしくない癖の一つや二つ欲するようになるものかもしれない。

「いや、別に。ただ俺は情報が欲しいし、情報の与えかた次第でオマエは俺をいいように利用できるかもな」

「ハッ。貴方を一方的に利用とした奴の末路なんて、想像に難くない。貴方のあまりの何も無さに正常な判断を狂わされ勝手に自滅するか、正気を失って貴方につっかかり殺されるんでしょう」

「俺を利用するつもりはないと」

「いいえ。イーブンな関係でなら話は別です」

 そう言うとイヴはにっこりと、否、にったりと笑って見せた。そして右手をすうっと林の方に指差す。

「標的はここからおよそ五〇〇メートル先の所にいて、先ほどから動きがありません。少し打ち合わせをして向かっても問題ないでしょう」

「……これだけ離れていて、さらに動向までつかむか」

 その感知能力の高さを素直に賞賛する。間違いなく彼女こそが世界一の暗殺者だろう。

 しかし世辞抜きの俺の言葉に、イヴは再び眉をひそめた。

「どうした?」

「標的の動向を掴むことはできた。けどよくわからないものが妨害していて、困難だった」

「……そうか。あの“沸血”のシャルケがやられたんだ。やはり何かあるな」

 もう一度戦いがあったこの周辺を見渡す。

 はっきりと残る踏込の跡。折れた木。砕けた岩。それらからシャルケがどういった立ち回りをしていたか、部分部分ではあるが想像することができた。しかし――

「一方的な戦いだったのね」

 イヴの言葉に頷く。そう、奇妙と言っていいほど一方的な戦いがここで行われていた。残された痕跡から読み取れるシャルケの動きは、その全てが攻撃だ。二分から三分の間に、一撃必殺の攻撃を百を超す勢いで繰り出している。

 その一方で防御は一切行っていない。踏込の跡が全て前方に進むためのもの。横への動きもいくつか見られたが、これも攻撃を前提とした動きだ。つまり――

「マリア・アッシュベリーは嵐のように繰り出されるシャルケの攻撃を延々と防いだ後、一撃で勝負を決した……有り得るか?」

「有り得たんでしょう。そもそも私たち五人を集めさせた標的です。そのぐらいの芸当ができても不思議ではないというより、むしろ納得では?」

「二対一でも厳しいかもな」


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