30: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 02:47:52.38 ID:zJUkddjZ0
イヴが先ほど指差した林の方を見る。この先にいる標的の女。いったい彼女は何者なのだろう。がぜん興味がわきあがる。
「どうする? シャルケが言ったとおり降りるか? 俺は進むが」
「……同行する」
あまり迷った様子も無く、イヴは声量こそ小さいが強く言い切る。その様子に、少し引っかかるものがあった。
「暗殺者らしくないな。確かな情報の無い標的を相手に、数的優位こそ確保しているが真っ向から殺しに行くとは」
「真っ向から戦うのは貴方だけ。私は隙を見て音も気配も無く背後を取るか、狙撃する」
「それでもらしくないことに変わりは無いだろう」
「……シャルケは戦意を喪失している。このまま貴方一人だけ見送ってむざむざ死なせれば、残りはよりによって“深緑”とあの“血まみれの暴虐”。手を組むことなど不可能。二人がかりで標的に挑める機会はこれが最初で最後。暗殺者は冷静で計算高いだけでなく、勢いにのることもあるだけ」
「……それだけか?」
「何が言いたい」
辺りに緊張感が漂う。焦げついたような、嫌いじゃない匂い。自分には“何も無い”という現実から目を逸らせる貴重な時間だ。
「シャルケが言った通り、オマエは殺しを好みもしないし金にも困っていない。十億のために、伸るか反るかの話に勢いでのる理由はなんだろうな?」
「……金のために動いていないのは貴方もだ」
「違いない。すまない、少し気になってな。突っ込んだことを訊いて悪かった。オマエが言うとおり、俺が真っ向から戦って注意を引こう」
このままやり合うというのも魅力的だった。だが暗殺者と真正面から戦ってもという考えがよぎるし、何より林の向こうにいる標的の方がより興味を惹く存在だ。ここは引いておこう。
イヴは少しの間俺を睨んだが、息を一つ吐くだけであっさりと感情を切り替えた。さすがは何百という殺しを成し遂げた暗殺者、といったところか。
「言いたいことは終わりか。それでは行きましょう」
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