何も無いロレンシア
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41: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 02:54:46.08 ID:zJUkddjZ0
※ ※ ※



 マリア・アッシュベリーの敵ではないと見なされたのだろう。林の中を通っていても、生々しい幻覚に襲われることはなかった。

 そして林を抜けると、横たわるシャルケの傍らに佇む女が出迎えた。

「何か弁明はありますか?」

「何も。あるとすれば謝罪だけだ。すまなかった」

 謝罪をほんの一言で済ませた俺に、イヴは大きくため息をつく。

「裏切者」

「……」

「嘘つき」

「……」

「自分から言い出したくせに」

「……」

「惚れっぽい」

「……」

「むっつり」

「……」

「スケベ」

「……ちょっと後半から待ってくれるか」

 何を言われても仕方ないので受け入れようと思っていたが、話がものすごい勢いで予想外の方向に進んでいるため、つい待ったをかけた。しかしそれにイヴは蔑んだ眼をする。

「ちょっと優しく会話をしてくれただけで惚れるだなんて。“何も無い”と呼ばれるほど縁のない人生だったのでしょうけど、いくらなんでもドン引きです」

「俺はオマエにドン引きだよ」

「自分に優しくない女には辛辣なんですね」

「いや、裏切ったのにずいぶん優しい対応だとは思っているぞ」

「えっ……私が優しいからって、惚れないでください。恥ずかしすぎて、虫唾が走ります」

 こいつはいったい何なのだろう。殺されても文句は言えない身だが、つい阿呆を見る目で見てしまう。


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