何も無いロレンシア
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54: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 03:04:17.50 ID:zJUkddjZ0
※ ※ ※



 高らかに謳う深紅の男。彼は自らが神聖で選ばれた存在だと疑いもしない。その真っ赤な槍をさらに穢れた血で朱く染め上げようとする。

 甲高く、それでいてくぐもった声で嗤う男。彼は自らの欲望に正直で、己の欲望を全てぶちまけても耐えかねない二人の男に舌なめずりする。

 安堵する男。彼が守ろうとする女からすれば夜の湖のような、彼女以外からすれば泥沼のような瞳は、不吉なまでに穏やかであった。

 壊れた者たちが三人、一点に集ってしまった。もはや誰も止められない。誰も制御できやしない。彼らを雇った者たちは、そもそも制御するつもりがさらさらない。

 三人が集った裏路地の宿から離れた場所。そこに窓が壊れドアも半開きのままの廃墟がある。その廃墟の中に一人の男が、手を後ろに組みながら窓辺に立ち、三人がいる場所へと視線を送っている。

 男の眼は、一見するとサーカスを見る子どもの眼のようだった。キラキラと輝いていた。

 しかしその熱を帯びた瞳には、ギラギラと狂った想いも込められている。猛獣使いがそのまま猛獣に食われてしまうことを期待する、筋書きとは違うことを期待する嗜虐と狂気の瞳。

 男は手を後ろに組んだまま、前のめりの姿勢となって狂おしい想いを口にする。

「狂え……狂わせてしまえ……存在価値の欠片も無いゴミ屑に、汚らわしい爬虫類、勘違いした妾腹の小僧ども」

 男――狐目の男、シモン・マクナイトはこれから何が起きるのかわかっていた。あの三人が出会ってしまえばどうなるのかなど、自明の理なのだから。

「貴様らの無価値な命で、筋書きを狂わせてしまえ……ッ」

 これから起きる惨劇の先を期待して、シモンは眼だけは異様に輝かせつつ、静かにほほ笑んだ。


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